レジリエンスの構築:株式投資家が問うべき重要な質問

2025-01-12
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30年近くにわたる緩やかな成長、低インフレ、かつてない低い負債コストの時期を経て、企業は現在、不確実性が高く、金利の劇的な上昇という、大きく異なるマクロ体制に直面しています。株式投資にとって長期的な影響がどの程度になるかは時間が経たなければわかりませんが、まず第一歩として、コアポートフォリオで保有している企業のレジリエンス(耐性・回復力)を見直すべきだと私たちは考えています。金利上昇やマクロ環境の悪化が及ぼす影響はセクターや業界によって異なりますが、鍵となるのは、困難を乗り切るための十分な力を備えた質の高い企業を見つけることでしょう。以下は、セクターや業界に関わらず私たちが投資先企業に求める極めて重要な特性の一部です。

資本配分の質

資金調達コストが高まる金利上昇局面では、より長期的な資本配分に長けた経営陣や取締役会を特定することがこれまで以上に重要になると考えます。持続可能な長期的リターンを追求するうえで、株主資本を慎重に管理することは常に重要な原則であると考えますが、現在の環境ではバランスシートをさらに精査する必要があると考えています。十分な手元資金を有し、債務水準が低い企業は、負債に頼ることなく上昇する借り入れコストを吸収する力が高くなります。またこうした企業は価格の歪みから生じる投資機会を活用するための資金力も備えています。

収益源の多様化と価格決定力

多様な収益源へのアクセスは、特定の地域やセクターにおける金利変動の影響を緩和するのに役立つため、現在の局面において重要な属性となります。しかし、この多様性は収益の確保につなげるために、ある程度の価格決定力と結びつけなければなりません。通常、私たちが投資対象とする企業は、市場のリーダーである傾向があります。そうした企業は製品価格を調整する余地が広く、それが金利や投入コストの上昇を相殺するうえで役立ち、利益率の維持につながっています。

強固な企業文化

従業員のために優れたスチュワードシップ責任を果たせる雇用主は、困難な時期でも従業員のモチベーションとエンゲージメントを維持することができ、定着率を高め、採用および研修コストを削減することができます。こうした側面はレジリエンスと安定性の源泉としては依然として過小評価されていると感じていますが、労働力とスキルが持続的に不足していることを考慮すると、ますます重要になっていると考えます。

投資家の信頼と安定

信用が低下し、金利が上昇する時代において、安定した資金源にアクセスできることは構造的な利点です。一般的に、優れたスチュワードシップを有する企業は市場で卓越したリーダーシップを発揮し、強力な株主還元を実現しています。これは投資家の信頼を高め、資本コストの削減につながり、資金調達への継続的なアクセスを確保する一助となります。

併せて、これらの評価基準はレジリエンスを測定するためにスチュワードシップの質を共通点とする貴重な枠組みを提供すると考えます。これは、私たちが「優れたスチュワード」として特定する企業が金利上昇、価格圧力、人手不足の影響を受けないわけではありませんが、これらの企業は強固なビジネスモデルのおかげで、より強いレジリエンスと適応力を発揮する傾向があります。またそうした企業は一般的に市場セグメントのリーダーであり、健全なバランスシートと強力なガバナンスや企業文化を有しています。

優れたスチュワードシップ責任を果たしている企業例* 

以下の事例のように、上述した特性を持つ企業は業界や地域を超えて存在します。

  • ある物流不動産プロバイダーは、資金調達のニーズが限定的であること、オポチュニスティック投資のための十分な資本があること、付加価値サービスからの収益源が拡大していることにより、現在の高金利環境において同業他社に対して有利な立場にあると見ています。また、経済環境が厳しさを増しているなかでも、賃料を適正価格まで引き上げ続けることができる立場にあります。
  • ある大手ホームセンターは、資本コストの上昇にうまく対処し、高い収益をステークホルダー(利害関係者)に再投資していると見ています。特に同社は労働力への投資を加速させ、賃金を全面的に引き上げることを決定しました。この動きは、従業員の満足度とエンゲージメントが高いほど、顧客体験が向上するという認識に基づいた同社の積極的な行動でした。
  • ある金融サービス・プロバイダーは、強固な財務基盤と保守的な融資慣行によるレジリエンスがみられますが、これは日本の低金利環境が続いているため、長期的に効率性を高める必要があった結果であると考えます。同社は日本国内市場において、イールドカーブ・コントロールの緩和に対応するポジションを確保するだけでなく、株主を非常に重視し、金利上昇局面において資本配分の質を向上させています。

まとめ

今日のレジーム・チェンジ(経済局面の変化)は企業が適応に向けて苦戦する中、株式投資家にとってはリスクとボラティリティが高まることを意味します。スチュワードシップという視点を通じて業界のリーダーに積極的に焦点を当てることで、私たちはポートフォリオのレジリエンスを高めるだけでなく、景気サイクル全体で持続可能な長期リターンの可能性も高めることができると考えます。

*記載はあくまでも例示であり、実際の保有銘柄を代表するものではないことがあります。いずれかの顧客口座において、実際に例示(又は例示と同様)の銘柄に投資を行う又は行ったこと、その投資が過去に利益を生じた又は将来に利益となり得ることを示唆するものではありません。実際の保有銘柄は顧客口座ごとに異なり、特定の顧客口座が例示の銘柄を保有することを保証するものではありません。

yolanda courtines

ヨランダ・コーティンス

株式ポートフォリオ・マネジャー