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マイケル・カルメン
- プライベート・インベストメント共同ヘッド
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資本不足だった2年間を経て、ベンチャー・エコシステムにようやく流動性が(不均等であるとしても)戻ってきました。2026年のベンチャー投資家は、より選別的で質重視の投資を行っていく必要があり、そういった投資で最も重要になるのはアクセスや引受における規律、そして市場横断的な知見です。我々はこれを再投資の時期、つまり、資金回収の様々な手段について柔軟性を保ちながら、革新的なリーダー企業に投資する機会と捉えています。
ウエリントンは、ベンチャーからグロース(成長)株、セカンダリー市場、公開市場まで視野を広げ、ベンチャー業界を形成する様々なトレンド全体にまたがる統合的な見方を提供しています。「2026年のベンチャーキャピタル市場予測」では、機関投資家がこの先1年間を見渡して問うべき5つの点について考察します。
IPOは、大勢の予想どおり、2025年に入って活発化し、大幅に増加しました。ボラティリティが高まった4月は減少したものの、第3四半期には大きく上昇しています。IPOの件数と調達額は過去12ヵ月でそれぞれ20%と84%増加しました1。重要なのは、2025年の成功は新しい手法が必要となった点です。具体的には、ダウンラウンドIPO(かつてはタブーだった、前回調達時よりも低い評価での資金調達)が一般的となりました。しかし、多くの銘柄は上場後に大幅に上昇しており(図表1)、バリュエーションが現実的であれば投資意欲が存在することが示されています。
注目度の高かったIPOが2025年に好パフォーマンスとなり、IPOの準備ができている企業が増加していることから、先送りされていたIPOが2026年にかけて実施されることが見込まれます。資産配分に当たっては、これらのIPOから直接的に、あるいはその後のエクスポージャーを通じて間接的に利益を享受できるかどうかを考慮すべきでしょう。
図表1
世界のM&A件数はさらに好調で、2025年第3四半期に急増し、2021年の過去最高記録を上回る勢いです2。発表されたM&A合計件数は前年比40%増加し、特にITセクターで高額の戦略的ディールに対する旺盛な需要があることを示唆しています3。このような再上昇をもたらした要因として、第3四半期終盤の一連のメガディール(全世界で100億米ドル超の取引が8件成立)、好調な株式市場、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げサイクルに対する確信度の高まりが挙げられます。買収会社が市場環境の改善を活かして買収を狙うなど、プライベート・エクイティ・スポンサーがこの動きを主導し、スポンサー付きM&A金額は世界全体で2024年第3四半期比約58%増加しました4。規制当局による審査がどのような影響を及ぼすか、まだ未知の部分がありますが、ミドルマーケット関連のディールのハードルは低くなるとみられます。
2026年のM&Aは金利動向に左右される公算が大きいとみていますが、現在進行中の利下げサイクルは春のFRB議長交代で加速する可能性があります。
2024年に約1,600億米ドルまで膨んだセカンダリー取引は、2025年に入りさらに大きく伸び、2,100億米ドルを超えると予測されています5。これは主に、多くの大規模なセカンダリー・ファンドが資金調達に成功したことに加え、LP(リミテッド・パートナー)やGP(ゼネラル・パートナー)、創業者が、流動性確保の手段として確立されつつあるセカンダリー市場に目を向けるようになったためです。
以前にも書いた通り、「VC(ベンチャーキャピタル)セカンダリー」は他のプライベート・エクイティ戦略に比べてまだ一般的ではなく、ユニコーン企業の時価総額全体の2%程度しかセカンダリー市場で取引されていません6。2026年はセカンダリー市場がますます中核的な流動性ツールになり、2025年に調達された記録的な資金が投資に向かうため、市場は引き続き成長すると見ています。流動性が正常化し、資本流入が増えるにつれて、セカンダリー価格はタイト化する可能性が高いと見ているため、先行組や出口戦略を模索するプライマリー投資家の優位性は高まると思われます。
図表2
過去10年にわたってウエリントンが未上場プラットフォームに投資してきた根本的な理由は、スタートアップが未上場でいる期間が長期化し、その価値のより多くが未上場企業投資家に帰属するようになっているためです。企業がより大規模になってからIPOを行うようになり、未上場企業のバリュエーションが同種の上場企業のバリュエーションにますます近づき、情報の流れが全体として加速するにつれて、未上場市場と上場市場の区別がますます曖昧になりつつあります。
これまで別々だった未上場資産と上場資産の運用は統合的アプローチに取って代わられつつあります。また、資産配分に当たっては、自社の戦略が、どちらの資産においても創出された価値を獲得できるものかどうかを考慮すべきでしょう。
図表3は、未上場企業の時価総額上位10社を10年前と現在で比較したものです。未上場企業にとって株式公開は依然として重要な出口の一つですが、上述した傾向が示唆しているのは、未上場市場全体にわたって価値創造の大きな余地が引き続き存在するということです。
図表3
ここまでAIの話をせずに4つのトレンドについて説明してきましたが、ベンチャー市場予測においてAIを完全に無視することはできません。ベンチャーキャピタルの投資機会は二極化しており、強力な(多くの場合、AI関連)企業が資金を引き寄せ、それ以外の企業は資金集めに苦労しています。AI関連のスタートアップはどのステージにおいても大幅に高いバリュエーションでより大きな金額を調達していることは周知の事実です(図表4)。米国がこの傾向を牽引し、世界のAI関連資金調達額の85%、AI関連ディールの53%を占めました7。米国は資金調達の中心というだけではなく、AI関連ラウンドの規模上位7件のうち4件も米国が占めています8。
重要なのは、AIへの過度な注目が他のセクターの資金調達に広範囲に影響を及ぼしているという点です。AI以外の投資機会に関しては財布の紐が固くなるため、強い競争力を持つ企業だけが多額の資金を調達しています。投資家は、採算性が高く、成長力があり、市場で確固とした地位を築いている企業を優先しています。優良資産への集中が続く中、2026年も源泉された確信度の高い投資が報われる年になると考えています。
図表4
2026年のベンチャーを取り巻く環境に関して、我々は1) IPO市場の勢いの継続、2) M&A活動の加速、3) 流動性確保の選択肢としてセカンダリー市場の主流化、4) 未上場市場で継続する価値創造、そして5) ベンチャーキャピタルにおける厳選された確信度の高い投資の有効性について明るい見通しを持っています。
2026年のベンチャー環境を特徴づけるのは回復と見ていますが、それは一様ではないでしょう。
資本は戻りつつありますが、成功は選別、知見、アクセスにかかっています。投資家にとって、今は活動を再開し、規律をもって市場に再参入する時と言えるでしょう。
1“Q3 2025 has revitalized IPO enthusiasm”、EY、2025年10月24日。| 2“Q3 2025 Global M&A Report”、Pitchbook、2025年10月。| 3“US M&A Activity Insights:September 2025”、EY。| 4同前。| 5“H1 2025 Global Secondary Market Review, July 2025”、Jefferies。| 6“Q2 2025 Pitchbook NVCA Venture Monitor”、2025年7月。| 7“Q3 2025 State of Venture”、 CB Insights。| 8同前。
マイケル・カルメン
ウィリアム・クレイグ
マーク・ワトソン