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ジョン・バトラー
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マクロ的観点からみて、資産価格にとって重要なのは、第1に経済活動とインフレの相互作用、第2にそれに関連する政策対応です。これは、理論的にはシンプルに聞こえ、実際、グローバル化が低インフレ・低金利環境に伴う長期的な成長サイクルを形成してきたことが示す通り、現実でもシンプルなものでした。しかし、今日の新しい経済的な枠組みでは、以下の理由により、この相互作用がより複雑になっています。
現在は、成長が将来のインフレを引き起こす従来型のサイクルに回帰し、経済は図表1に示す4つの区分の間を急速に移動する可能性があります。現在進行しているこの景気循環的環境への移行は、景気サイクルの各段階において異なる資産・投資戦略がそれぞれ異なるパフォーマンスとなるため、投資家にとって大きな意味を持ちます。さらに、2025年全体を通してすでに見られたように、市場は様々な結果に対する確率を頻繁に修正する可能性があります。
こうした背景の下で、2026年の見通しは以下の4つのシナリオをめぐって展開すると考えています。
以下では、各シナリオを検討し、経済がどの区分にあり、どういった市場の反応が予想されるのかを投資家が判断できるよう、各シナリオの特徴を概説します。
図表1
1.市場が織り込んでいるゴルディロックス・シナリオの継続(当面)
様々な資産クラスを見渡すと、世界市場は依然として、2018年以前の世界経済の特徴だったインフレなき成長シナリオが継続すると想定しているようにみえます。以下がその表れです。
このシナリオは、AIの成功に大きく依存しています。AIによる生産性の向上が関税や保護主義の高まりによる悪影響を上回れば、需要がインフレを加速させることなく堅調に推移する可能性があります。
これは資産価格にどのような影響を与えるでしょうか。
このような環境下では、株式は上昇を続け、クレジットスプレッドは引き続きタイトで、国債利回りは趨勢的な経済成長率の改善を反映して小幅に上昇すると思われます。確かに、AIによる離職によって失業率が一時的に上昇する可能性はありますが、生産性の向上でインフレが抑制されているため、政策当局は緩和的政策で対応することができます。
労働市場が軟化し、インフレ率が低下する(ただし依然として高水準)とみられることから、このシナリオは短期的には継続すると考えられます。しかし、我々の分析では、当シナリオが2026年最も可能性が高いシナリオではないことが示唆されています。
2.インフレを伴うより高い成長―最も可能性が高いシナリオ
なぜ最も可能性が高いと見ているか。世界の名目成長率が引き続き堅調である一方、大半の先進国ではインフレ率が引き続き目標の2%を上回っています。それでも、政策当局者は以下で示す通り、緩和的な姿勢を堅持しています。
このような刺激策は、世界経済がインフレを伴う複数の供給ショックに見舞われている中で実施されています。
AI主導の生産性向上が実現しなければ、供給が減少する中で政策が需要を促進するため、インフレを伴う好景気が2026年に起きる条件が整います。このテーマはまだ主流でないかもしれませんが、インフレを押し下げるのに十分な需給の緩みがないことが明らかになる中で労働市場の安定化の兆候が見られれば、市場が転換する可能性があります。
これは資産価格にどのような影響を与えるでしょうか。
どのような政策がとられるかが鍵になります。インフレを伴う好景気でもリスク資産に恩恵をもたらすことができ、力強い名目成長が株価を押し上げ、クレジットスプレッドの拡大を抑制するはずです。先進国の利回りが構造的に上昇する可能性も高まります。政策当局が成長を優先する政策を中止し、引き締め政策を通じたインフレ抑制に着手するまで、または、債券市場が「不適切な」政策対応を罰してターム・プレミアムの引き上げを通じた引き締めを強制するまで、リスク資産の上昇が続く可能性があります。債券投資家は少なくとも、労働市場回復の明確な兆候など、景気サイクルの現段階で緩和政策が不適切であることを示すデータが現れるのを待つ必要があり、それにはまだしばらく時間がかかりそうです。短期的には、世界の、特に米国の労働市場は軟化するリスクの方が高いと我々はみています。しかし、(労働市場の)安定化の兆候が現れるまでに時間がかかればかかるほど、政策当局が好景気とその後の不況の条件を生み出すリスクは高くなります。
3.景気後退リスク(起きる確率はより低い)
2026年に景気後退が起きるリスクを完全に無視することはできません。様々な形のきっかけが考えられますが、リスク資産により大きなマイナス影響を及ぼすものもあります。例えば、関税や既に広がりつつあるインフレの影響は、経済モデルが示唆するよりも深刻になる可能性があります。もっとも、緩和政策がとられていることや、民間セクターの借り入れが低水準であることを考慮すれば、このシナリオは一時的な景気減速に近いものとなるでしょう。
我々は、より大きな景気後退リスクは以下に起因するとみています。
これは資産価格にどのような影響を与えるでしょうか。
2026年にインフレを伴わない景気後退に陥るリスクは、高まりつつあるとはいえ、まだ比較的低いとみています。実際に起きれば、株式は売られ、債券は(少なくとも当初は)上昇し、クレジットスプレッドは大幅に拡大するでしょう。景気後退がAI主導の調整によって引き起こされる場合、大幅なドル安も起きる可能性があるでしょう。
4.スタグフレーション:監視すべきテールリスクの一つ
現時点ではテールリスクにとどまっていますが、英国など一部の国ではスタグフレーションの兆候が見られ、保護主義の高まりによってさらに悪化する可能性があります。雇用が悪化する中でもインフレ率が上昇すれば、より明らかな兆候となるでしょう。以下の理由で当リスクは重要とみています。
これは資産価格にどのような影響を与えるでしょうか。
スタグフレーションは、特に長期化した場合、株式とクレジットスプレッドに最も大きな悪影響が及びますが、ブレークイーブン・インフレ率やターム・プレミアムによって債券利回りが上昇することをも意味します。
図表2に要約されているように、2026年の最も可能性の高いシナリオはインフレを伴う景気拡大であると考えています。市場は当面、ゴルディロックスのシナリオを維持し、その後、高い名目成長率という新たな現実に適応することになるでしょう。可能性は大幅に低いものの、景気後退や、さらにはスタグフレーションのリスクを排除することはできません。
図表2
各シナリオが資産価格とポートフォリオに与える影響は大きく異なります。最も起きる可能性が高い「インフレを伴う成長」は、一般的にリスク資産の支えとなる傾向がありますが、ある時点で政策当局者が引き締めを開始するか、それができない場合、市場がより高いリスク・プレミアムを要求する可能性があります。
現在の急速に変化する環境下では、投資家は警戒感を持つ必要があります。景気サイクルの変化の明確な兆候を探り、高まった下振れリスクを軽減しつつ、2026年に見られる可能性が高い重要な投資機会を最大限利用できるように資産配分を積極的に調整することが望ましいでしょう。
ジョン・バトラー
オーエン・オキャラハン