2026年のアセット・アロケーション見通し

選挙、企業業績、世界的な景気刺激策がリターンを押し上げ

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2026-12-31
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要旨

  • 2026年の環境は、金融・財政政策を含め良好であり、我々は引き続き債券よりもグローバル株式を選好しています。バリュエーションは割高ですが、企業業績は特に米国で好調であり、この状況が今後も続く見込みです。
  • 株式市場の中で最も選好しているのは日本、次いで米国です。米国では、2026年にようやくITセクターから他のセクターへ物色範囲が拡大するとみています。欧州と新興国は、欧州における構造改革の進展の遅さや利益成長率の低下、中国での収益性の低さのため、魅力が劣ります。
  • タイトなスプレッド、国債イールドカーブのスティープ化、テクノロジー・セクターの債券発行が大幅に増える可能性を踏まえ、社債よりも国債を選好しています。国債の選好によって、株式市場が下落した際にある程度マイナスが緩和される可能性もあります。英国債の高いターム・プレミアムは特に魅力的であると考えています。
  • コモディティで唯一アクティブなポジションは、供給が需要を上回ると予想される石油のアンダーウエイトです。金は、地政学リスクやスタグフレーション、米ドル安懸念に対するヘッジとして複数の役割を担うことができることを踏まえ、金価格下落時に買い増したいと考えています。
  • 下振れリスクとしては、インフレ懸念を背景とした世界的な金利上昇が金融引き締め観測につながり、リスク選好意欲に悪影響を及ぼす場合が考えられます。AIに対する失望や財政懸念も株価を不安定にさせる可能性があります。上振れリスクとしては、米国の生産性が飛躍的に向上し、インフレ率の上昇を伴わずに潜在成長率が上昇する場合や、欧州や中国で実質的な構造改革が実施される場合が考えられます。
図表

概要

関税をめぐる懸念の後退、中央銀行による金融緩和、AI主導の経済成長、そして金の大幅な上昇などを背景に、2025年はグローバル株式、債券、コモディティがすべてプラスのリターンを上げるという2019年以来の快挙を成し遂げました。2026年は、バリュエーションやAIバブル、米中関係などのリスクがある中でも好調を維持できるでしょうか。4つの要因が差し引きポジティブな結果をもたらす可能性が高いと考えていますが、その過程で不安定な状況が生じる可能性があります。

  1. 企業業績の伸び-AIをめぐる状況は競争の激化と巨額の支出によって複雑化しています。しかし、超大型IT企業だけにとどまらず、様々な地域やセクター、時価総額の企業で業績が大きく伸びると予想しています。関税が課される中でも企業は利益率を維持、拡大できているため、業績の改善が株式においてプラスのリターンを生む可能性は高いと見ています。
  2. 世界的な財政刺激策-政府債務が長期的な脅威になりつつあるものの、すべての先進国地域において名目成長率や消費者心理、企業投資を下支えするための財政刺激策が実施される見通しです(図表1)。
  3. 世界の金利-米労働市場の冷え込みはFRBの利下げ見通しを強め、我々のデュレーション・ロングの根拠となっています。しかし、米国や他の国でインフレが広がれば、状況が劇的に変わる可能性があります。日本の金融引き締め政策はこの最初の動きになるかもしれません。
  4. 政治の風向き-有権者と市場がインフレと政策に対する不満を表す可能性があります。米国や欧州、中南米の選挙におけるポピュリスト政党の支持拡大が市場を大きく揺るがす可能性があります。
図表1

これらのテーマを踏まえ、私たちは株式を強気にみています。ただし、他の資産クラスよりもわずかにオーバーウエイトとしているだけです。株式の中では、高い名目GDP成長率と好調な企業業績を考慮し、日本株が最も好ましいと考えています。米国株も選好しており、伝統的産業が景気上昇局面にあることや財政刺激策により、好業績企業が広がると予想しています。ユーロ圏、英国、新興国についてはそれほど楽観的ではありません。これらの国では2025年にマルチプルが拡大しましたが、利益はあまり伸びていません。

債券市場に関しては、国債イールドカーブのスティープ化、タイトなクジット・スプレッド、AI関連の債券発行をめぐる懸念から、社債よりも国債を選好しています。ファンダメンタルズや政策に対して債券価格が乖離しているため、地域的にはユーロ圏や日本よりも英国を選好しています。

コモディティに関しては、供給が需要を上回ると予想される原油のアンダーウエイトを維持しています。金については中立的な見方を保っていますが、現在ほど極端な水準でない価格になれば買い増す予定です。

株式:強気を維持、ただし警戒が必要

景気刺激的な金融・財政政策と増益を支える環境を踏まえ、グローバル株式については小幅オーバーウエイトの見方を維持しています(図表2)。昨年は大半の市場(米国を除く)でバリュエーションの拡大が利益の伸びよりもリターンに貢献しましたが、今後12カ月間は主要地域すべてで6~11%の利益の伸びが見られると予想しています。増益の最も大きな、かつ最も意外な要因の一つは利益率の上昇です。関税などの不確実性があるにもかかわらず、大企業の利益率は上昇しています。これは、企業が機敏に動き、AIなどのイノベーションによって効率性を向上させていることの証しです。

図表2

株式のオーバーウエイト幅を控えめにしている理由の一つとして、楽観的な経済シナリオへの傾倒を反映した株式リスク・プレミアムの縮小に対する警戒心があります。AIを取り巻くリスク、モメンタム主導の上昇相場、そしてバリュエーションを考えると、今後の市場環境は時にやや不安定になるだろうとみています。

日本株は今後12カ月間、他の地域をアウトパフォームすると見ています。高い名目成長率が追い風となり、日銀の利上げの可能性が高いとはいえ金融環境は依然として緩和的で、実質利回りは大幅なマイナスです。財政刺激策はさらに積極的になる見通しで、国内産業にプラスとなります。

米国株も、超大型株やAIだけでなく、一株当たり利益(EPS)が広範囲で改善することによってアウトパフォームするとみています。小型株でさえ業績予想が上方修正されており、数年にわたった悪循環は終わりを迎えています。AIの拡大が多額の借金に依存していることを示す兆候に注意していますが、AIの需給を含め、ファンダメンタルズは依然としてAI支出を後押ししており、高いフリーキャッシュフロー・マージンが大きなバッファーになると考えています。

指数のウエイトが高い新興国に目を向けると、韓国と台湾については強気ですが、インドと中国についてはより厳しい見方をしています。世界情勢(米金利低下、米ドル安)は好材料ですが、中国とインドに対する確信度の低さが、株式全体に対してより強気になることを阻む要因となっています。中国の反「内巻(過当競争)」政策は、生産拡大から効率性、ひいては収益性重視への転換を伴いますが、これには少し時間がかかるでしょう。その間に市場は、企業業績や経済回復の後押しがあまりない中で市場心理や余剰資金を背景に急騰しました。

欧州(除く英国)と英国については小幅アンダーウエイトとしています。ユーロ圏のマクロ経済見通しは改善しつつありますが、構造改革に明確な進展が見られないことや、自動車やクリーン・テクノロジーなどの産業の主要な利益源をめぐって中国と直接的に競争していることが足かせとなっています。フランスなどの財政不安や新たな選挙の可能性も見通しをさらに曇らせています。同地域においては1桁台後半の増益を予想するものの、これまで一貫してコンセンサス予想を下回ってきた点に注意する必要があります。英国は依然として我々の利益見通しが最も低い国です。ITセクターの欠如や政策の不確実性が投資や消費に悪影響を及ぼしています。

債券:社債よりも国債を選好

社債と国債を比較すると、より高格付けの国債の「キャリー」を選好しています。このような国債はターム・プレミアムが魅力的で、イールドカーブのスティープ化によって「イールドカーブのロールダウン効果」がリターンを創出します。

国債市場では乖離が目立っており、これまでと比べサイクルが米国と連動していません。実際、米国の10年債利回りは2025年初来で約40bp低下しましたが、他の先進国の利回りは5~90bp上昇しました。これは方向性と規模の点で過去10年間には見られなかった極めて異例な状況です。中央銀行の政策見通しにも乖離の兆候が見られ、市場は2026年のFRBの利下げと他の先進国中央銀行の利上げを織り込んでいます。こうした状況は相対価値を狙う戦略にとって好機であるため、英国の金利をオーバーウエイトとする一方、ユーロ圏と日本の金利をアンダーウエイトとしています。

2025年は様々なセクターで社債をオーバーウエイトとしましたが、現在は市場全体のリターン特性がよりバランスのとれたものになっていると考え、中立的なスタンスに変更しました。リスク資産の環境は依然として良好ですが、スプレッドは極めてタイトであり、キャリー以外に上振れの余地はほとんどありません。株式の項で述べたように、ITセクター全体では借り入れの余地があると考えていますが、AI設備投資に係る資金調達が社債市場で増えつつある点や、一部のIT企業がバランスシートの悪化を許容するリスクに対して注意を払っています。

コモディティ:今後の石油と金

石油についてはアンダーウエイトとしています。中国の持続的な備蓄などによって需要は十分に下支えされるとみているものの、OPECプラスが減産幅を縮小するため、2026年第1四半期から年間を通じて供給が需要を上回ると予想しています。この見解に対するリスクとしては、ベネズエラでの軍事行動(供給が短期的に下振れるリスク)、ウクライナ停戦による対ロシア制裁の解除(供給が上振れるリスク)が挙げられます。

金については中立を維持しています。中央銀行の購入やデジタル資産(ステーブルコイン)の需要など、金融面の需要要因は依然として健在です。投機的ポジション(先物)は再度高水準となり、上場商品(ETF)への資金流入も支援材料となっています。財政悪化や中央銀行の独立性に対する懸念など、構造的な追い風も続いています。しかし、バリュエーションが極端な水準に達しており、金融資産との比較では1980年以来の高水準となっています。

投資への影響

株式に対する強気のスタンスを維持-企業業績と政策は株式にとってポジティブに働きます。しかし、バリュエーションが非常に高い水準で推移する中、市場はAIや財政規律の緩み、大国間の競争といった問題に直面するとみられます。ボラティリティが高まれば、リスクを追加する機会が生じる可能性があるでしょう。また、好業績の企業が増えれば、地域、セクター、時価総額にまたがった分散投資の有効性が上がります。

魅力的なキャリーと地域間格差を狙った投資として世界の国債をとらえる-タイトなクレジット・スプレッドと一部の国債市場での魅力的な利回りを背景に、デュレーションを若干長めにする一方、英国の魅力的なターム・プレミアムに焦点を当てています。

社債の利益確定売りを検討-歴史的にタイトな水準にあるスプレッド、さらにバランスシートの悪化やAI設備投資に起因した社債発行増をめぐる懸念を考慮し、中立的なウエイトになるようエクスポージャーを削減すべきであると考えています。2025年のトータルリターンの大半はスプレッドが拡大した後に獲得されたものであるため、より魅力的な水準になるのを待ってエクスポージャーを増やすのが賢明でしょう。

Nanette Abuhoff Jacobson

ナネット・アブホフ・ジェイコブソン

グローバル・インベストメント兼マルチアセット・ストラテジスト
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スプリヤ・メノン

マルチアセット・ストラテジー・ヘッド(EMEA)