2026年プライベート投資見通し

2026年のプライベート・クレジット市場予測:5つの注目トレンド

2026-12-31
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プライベート・クレジットは、「既知のもの」だった数年間を経て、金融市場の中で最もダイナミックな分野の1つとなりました。2026年はその進化が始まったばかりであることを示す年となるでしょう。

この資産クラスは、今後1年間で、資金調達手段の主流としての役割を強め、原点であるミドルマーケット向け直接融資を超えて、様々なセクターのより多様な調達手段になるとみられます。現在進行しているこのような変化は、銀行の活動の構造的な変化や、オーダーメイド融資に対する需要の高まり、そして機関投資家・富裕層投資家の間で高まる利回りや分散投資を求める声によって促進されています。

この「2026年のプライベート・クレジット市場予測」では、プライベート・クレジットの長期見通しを形成する5つの構造的テーマに焦点を当てます。

テーマ1:プライベート・クレジットに対する投資機会の拡大 

今日、プライベート・クレジットの推定市場規模は、多様な資産クラスにわたり、合計で30兆米ドルを超えています(図表1)。重要な点として、この推定市場規模のかなりの部分は、多くのプライベート・クレジット・ポートフォリオに現在含まれている伝統的な企業融資の範囲外に属していることが挙げられます。

これは、プライベート・クレジットに関する投資対象を拡大することができ、市場の短期的、長期的トレンドにうまく乗ることができる投資家に大きな機会をもたらし、顧客に一貫した価値を創造することができることを意味していると考えています。

図表1

テーマ2:パブリック市場とプライベート市場の交錯 

パブリック市場とプライベート市場の境界線が曖昧になっており、このトレンドが持続的な投資機会を生み出す可能性があると考えています。発行体にとって、またアセット・オーナーにとっても、このような両市場の融合はあらゆる側面で起きています。

発行体は、ますます複雑化する資本ニーズを満たすため、パブリックとプライベートのファンディング市場の両方を資金調達のために利用しています。その好例が商業用不動産デットで、CMBSや銀行、保険会社、REIT、プライベート・クレジットを巻き込んだ取引が多く見られます。このような構造があるため、投資家が市場動向の全体像を理解するには、すべての資金調達手段を把握することが重要となります。

大規模データセンターへの融資も、パブリックとプライベートが交錯する重要な分野です。このようなプロジェクトには多額の資金が必要であり、発行体は資金を確保するためにパブリック市場とプライベート市場の両方を利用しています。データセンター需要の増加が見込まれることから、両市場にまたがる資金調達ソリューションの革新は今後も続き、混合型の資金調達戦略のトレンドがますます強まるとみています。

アセット・オーナーもまた、総合的なポートフォリオ構築のメリットが増す中で、より統合されたパブリック/プライベート・ソリューションを求めています。このようなアプローチは、パブリック・クレジット市場の流動性や透明性と、プライベート・クレジット市場が提供する利回りや柔軟性、差別化された投資機会とを組み合わせることによって、より強固で分散された投資の枠組みを構築することができます。

テーマ3:クレジットプロファイルの変化 

パブリック市場とプライベート市場の融合がもたらす影響の1つに、市場の一角で起きている競争の激化がクレジットプロファイルに影響を及ぼす可能性があるということがあります。その明確な例が、ミドルマーケット向け直接融資と大型シンジケートローン(BSL)市場です。過去10年間の大半を通じて、ミドルマーケット向け直接融資はレバレッジド・クレジット融資のごく一部であり、公開型の大型シンジケートローン市場のシェアを奪ってきました。歴史的に見て、直接融資はパブリック市場で最もリスクの高い分野(CCC/B格付け)をプライベート市場に切り替えてリファイナンスしてきました。

注目すべきは、過去10年間、ミドルマーケット向け直接融資はレバレッジド・クレジット市場全体の約5倍の速さで成長し、現在では大型シンジケートローンやハイイールド債市場とほぼ同規模になり、より直接的に競争していることです。2024年と2025年には、パブリック案件がプライベート市場に移行したのと同程度に、プライベート・クレジット案件がパブリック市場でリファイナンスされました。最近のディールフロー・データは、このパブリック/プライベートの動きがいかに流動的になっているかを表しています(図表2)。

図表2

クレジットサイクルが終盤に向かう中で、このような競争は、引受の過度な積極化やコベナンツによる保護の弱体化といったリスクを増大させる可能性があります。これらは、直接融資市場における信用の質の低下をもたらす可能性があるとみていますが、このようなリスクを軽減するために、プライベート・クレジットの中でもまず第1に、より高い格付けを重視しているもの、第2に、コベナンツによる保護がより一貫しているもの、第3に、競争が激しくない環境でプライベート・クレジットが資金調達ギャップを埋めているため、より魅力的なリスク・リターン特性を提供できるものといった異なるセグメントに対象を広げることが投資家にとって有益と考えられます。

テーマ4:個人投資家や富裕層投資家からの需要の拡大

資産配分の観点からみると、アセット・オーナーは、パブリック市場のエクスポージャーの分散化と、プライベート・クレジット市場の非流動性や複雑性によって生じる可能性があるプレミアムの獲得を目指しているようにみえます。また、富裕層投資家や個人投資家からの需要も高まっています。米国では、プライベート・クレジットへの個人資産の配分額は現在約1,000億米ドルですが、今後、年率80%近いペースで増加し、2030年には2兆4,000億米ドルに達すると予測されています1

このような動向が見られるもう一つの事例がインターバル・ファンドで、運用資産は2025年半ばまでに4,500億米ドル近くに増加しました(2024年末から16%増、2022年末から77%増)2。クレジットを中心とした戦略がこのような運用商品への配分の中でも依然として最も人気があり、セミリキッド・クレジット・ファンドの運用資産は2024年末から22%増加して2,300億米ドルに達しました(図表3)。これらのファンドは歴史的に、変動金利ローンとレバレッジを組み合わせることにより、上場債券を上回る利回りを提供してきました。現在の金利環境を踏まえ重要なのは、変動金利債の金利は短期金利に対するスプレッドに基づいて支払われるため、インカム収益は短期金利が高いときに増加し、低下すると減少するということです。

米連邦準備制度理事会(FRB)の現在の利下げサイクルにより、変動金利クレジット・ファンドからのインカム収益(およびリターン)は減少する公算が大きいと見られるものの、この資産クラスに対する投資家の意欲が減退している兆候はありません。市場の他の分野における低い流動性などを考えれば、これらの商品がインカム収益を生み出す能力には依然として価値があります。このような需要の高まりに対して、資産運用会社は、幅広いクレジット市場全体にわたってパブリック・プライベート両方の資産に資金を配分するソリューションを設計しようと努めています。

図表2

テーマ5:進化する銀行の役割 

銀行は規制強化でバランスシートの再構築を余儀なくされてきたため、クレジット市場では銀行離れが長年のトレンドとなっています。しかし、クレジット市場における銀行の役割は依然として重要であり、この数年間で大きく進化し、今後さらに変化を遂げるものとみられます。

銀行は、市場ベースのレンダー(貸し手)の主要なパートナーとなり、プライベート・クレジットの今日までの成長に大きく貢献してきました。こうした提携関係は、市場ベースのレンダーに対する融資、プライベート・クレジット商品の自らの顧客への販売、特定の資産クラスに関する専門的なオリジネーション能力やリスク管理能力の活用など、様々な形態をとります。

FRBの最近のデータでは(図表4)、非預金金融機関(NDFI)への融資が着実に増加し、クレジット市場で銀行の役割が進化していることが示されています。この融資の伸びは金融システムにおけるレバレッジの増加を反映していますが、一方で、これらのエクスポージャーは米商業銀行の融資・リース合計の約13%しか占めていません。これは、以下2つの重要な点を表しています。

  1. 市場ベースの融資への移行:銀行はリスクをバランスシート上で直接保有するのではなく、プライベート・クレジット運用会社との提携を強化しています。
  2. 資本構造の強靭性:これまでのサイクルとは異なり、増加した借り入れの多くは預金基盤を有する銀行ではなくプライベート・レンダーによるものであり、この点でシステミックな脆弱性は抑制されています。

プライベート・クレジットの拡大につれて、こうした提携関係が深まり、銀行は主要なリスク保有者ではなく仲介者としての地位を固めていくとみられます。

図表2

プライベート・クレジット市場予測の結論

2026年に向けて、プライベート・クレジットは2025年の勢いを持続すると考えています。重要なのは、プライベート・クレジットが進化するにつれて、構造的および短期的なトレンドに基づく新たな成長分野が出現し、その守備範囲が拡大していくだろうということです。そのため、投資家は、投資機会を包括的に捉える視点や、クレジットを深く精査する能力、十分なリソース、そして、市場が提供する機会とリスクにうまく対応するための長期的な関係を持っていることが不可欠であると考えます。

1出所:Deloitte Center for Financial Servicesの分析。| 将来に関する予想がそのとおり実現する保証はありません。| 2出所:Morningstar Direct、SEC申請資料。2025年6月30日現在のデータ。

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エミリー・バニスター

プライベート・クレジット・ディレクター
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ソナリ・ウィルソン

リード・インベストメント・ディレクター、プライベート・クレジット