原油はきっかけにすぎない―重要なのは資本コスト

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2027-10-22
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ウェンディ・クロムウェル, (CFA), ヴァイス・チェア
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ブリッジ・クラーナ, 債券ポートフォリオ・マネージャー
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原油価格の高騰により、米連邦準備制度理事会(FRB)に再び注目が集まっています。しかし、投資家にとってより大きな問題は、もはや単にエネルギー価格の上昇がさらなる利上げにつながるかどうかではありません。

原油ショックと同時に、サプライチェーンの分断、財政赤字、脱グローバル化、AIやインフラ投資に必要な巨額の資金といった、インフレや長期金利に上昇圧力をかけ続ける可能性のある複数の要因が発生しています。

これらを総合すると、資本コストを決定する要因が増え、従来型の分散投資ではこれまでのように対処できなくなる可能性があるという、より広範な課題が浮き彫りになります。

石油はきっかけであり、全体像の一部に過ぎない。

ホルムズ海峡の封鎖により、通常であれば世界の海上石油貿易の約5分の1が輸送される航路が遮断されました。ドローン攻撃を受けてサウジアラビアが東西パイプラインの稼働を停止したことで、状況はさらに厳しくなりました。このパイプラインはおよそ日量400万~500万バレルを輸送し、サウジ産原油にとってホルムズ海峡を迂回する主要なルートとなっていました。

こうした状況下で、6月時点では70米ドルを下回っていたブレント原油が9月14日には107~109米ドル前後に達しました。

より大きな問題は、単に原油価格が上昇していることではありません。2026年中に本格的な正常化が実現するのかどうかも、市場は考慮する必要があります。

中央銀行にとって、原油ショックは、政策金利を引き上げても根本的な供給問題を解決することができないため、特に厄介な問題です。利上げは、需要を冷やすことができても、航路の再開や損傷したインフラの修復、タンカー保険料の引き下げ、石油の増産をもたらすことはできません。

その結果、エネルギー価格の上昇によってインフレが加速する一方で経済成長が鈍化する可能性があるという、対処が難しい板挟みの状況にFRBは直面しています。

インフレは現在、価格転嫁段階にある

最新のインフレ統計は一次的影響を示しています。8月の消費者物価は前月比0.4%、前年同月比3.4%の上昇となりました。8月のエネルギー価格は前月比2.1%上昇しました。このうち、ガソリン価格は同3.9%上昇し、月間上昇分の3分の1以上を占めました

コアインフレ率は前年同月比2.4%と、かなり落ち着きを取り戻しました。

この違いは重要です。原油価格が比較的急速に下落すれば、インフレへの影響の大半は総合インフレ率に限定され、最終的には消えていく可能性があります。

より大きなリスクは、原油やディーゼル燃料の価格高騰が貨物輸送、航空、製造業、農業などの原材料費に影響を及ぼすことです。もし企業がこうしたコストを価格に転嫁し始め、家計や市場がインフレの高止まりを予想し始めると、政策対応はより難しくなります。

米国経済は1970年代のオイルショック当時と比べてエネルギー効率が向上し、石油生産量もはるかに増加しているため、原油価格の一定の変動から受ける打撃はこれまでよりも小さくなるかもしれません。

しかし、この強靭性は両刃の剣になりかねません。経済成長と雇用が堅調に推移する一方でインフレが高止まりする場合、FRBはますますインフレ対策に注力する可能性があります。

長期金利は別の状況を物語っている

FRBの政策は金利状況全体の一部に過ぎません。市場がインフレやデュレーションのリスクに対してより高い見返りを求めた結果、米10年物国債利回りは9月中旬に一時5%に達しました。現在の債券利回りの水準では、米10年物国債の利回りが5.5%を上回った場合、投資家が今後1年間で損失を被ることになります。言い換えれば、債券には一定の安全余地がありますが、それは投資家が投資期間を長めに取る意思がある場合に限られます。

長期利回りはインフレ期待や米国債供給量、投資家が長期債を保有する際に求める上乗せ金利、民間投資との資金獲得競争を反映します。

この最後の要因がますます重要になりつつあります。データセンターや発電、送電網などのAI関連インフラは莫大な資本を必要とします。

つまり、AIは株式投資だけでなく、資本コストにも大きな影響を及ぼしています。

自己資本を原資として投資を行う資金力のあるIT企業は、プライベートクレジットやプロジェクトファイナンスに継続的に依存する開発業者と大きく異なる状況にあります。

株式投資家にとっては、企業が上昇した資本コストを上回るリターンをその支出から生み出せるかどうかということが問題です。社債投資家にとっては、キャッシュフロー、担保、レバレッジおよび資金調達の柔軟性が極めて重要になります。

AI関連の投資機会では、単にエクスポージャーを持つことと同じくらい、銘柄選択が重要になる可能性があります。

なぜ従来型の分散投資を補強する必要があるのか

ポートフォリオは、リーマンショック後の大半の期間で「成長率の鈍化、インフレ率の低下、FRBによる金融緩和、利回りの低下、そして債券が株式市場の不調を相殺するのに貢献」という見慣れたパターンの恩恵を受けてきました。

供給主導のインフレ・ショックは異なる様相を呈する可能性があります。

成長見通しが不透明になる中でもインフレ率が上昇するかもしれません。FRBが引き締め姿勢を維持する一方、長期金利が高止まりし、またはさらに上昇する可能性があります。

その結果、株式市場が割引率の上昇や利益率の縮小を通じて圧力を受ける可能性があるのと同時に、固定利付債も利回りの上昇によって打撃を受けます。

とはいえ債券が株式からの分散投資としての役割を完全に果たさなくなるわけではありません。従来型の景気減速局面では、米長期国債は依然として有効なヘッジ手段となり得ます。

しかし、これは、分散投資の有効性が資産クラスの種類よりも、各保有資産が対応することになる経済的リスクによって判断される必要があるのではないか、ということを意味します。

より高い資本コストの世界におけるポートフォリオ運用上の5つの留意点

1. デュレーションはより慎重に

原油ショックが最終的に経済成長を鈍化させる場合などでは、長期債は依然として重要な役割を担う可能性があります。しかし、長期債をポートフォリオの定番のショック緩衝材と見なすべきではありません。

インフレ率のボラティリティの高まりや米国債の大量発行、ターム・プレミアムが拡大する可能性を踏まえると、金利の一方向への大きなポジションを取るよりも、満期構成をよりバランスの取れたものとすることが有効となる可能性があります。

重要な違いは金利が変動している理由です。成長率ショックとインフレ・財政ショックとでは長期債に及ぼす影響が非常に異なる可能性があります。

2. インフレ感応度を明示的に組み込む

固定利付債がインフレ・ショックをすべてヘッジすることができないのであれば、インフレへの耐性を持つ他の手段も検討する余地があります。

インフレが予想外に上振れた場合、インフレ連動債、コモディティ、一部の実物資産は異なる反応を示す可能性があります。インフラも、これらの資産が価格決定力を有する場合や契約上のインフレ調整を伴う場合、一定の役割を担うことができます。

もっとも、インフレに対して常に有効なヘッジ手段は存在しません。銘柄選択も依然として重要です。

3. バランスシートの強靭性に注目

資本コストの上昇はすべての企業に等しく影響を与えるわけではありません。

価格決定力があり、フリーキャッシュフローが堅調で、利益率が安定し、レバレッジが管理可能な企業は、エネルギー・コストや運賃、資金調達コストの上昇を吸収する上でより有利な立場にあると考えられます。

信用力の低い借り手が資金調達コストの上昇に直面する中、社債においては借り換え計画やレバレッジ、キャッシュ創出能力、バランスシートの柔軟性がますます重要になる可能性があります。

4. 分散化に用いる資産を拡大する

インフレ・ショックが株式と固定利付債に同時に悪影響を及ぼす可能性がある場合、ポートフォリオでは、リターン源泉をさらに分散することが有効となる可能性があります。

これらのドライバーには、投資目的や制約条件に応じて、マクロ戦略、絶対収益戦略、ロング・ショート戦略、マルチ戦略、さらに特定の実物資産やインフレ連動債などが含まれます。

その目的は、あらゆるリスクをヘッジする単一の資産を見つけることではなく、むしろ、あらゆるポートフォリオ・リスクを相殺するのに1つの債券配分に頼らないようにすることです。

5. 流動性を確保する

インフレ、金利、クレジットを巡る見方が市場価格に急速に織り込まれ得る環境では、流動性には利回り以上の価値があります。

投資家にとって、現金、短期国債およびその他の質の高い短期の確定利付資産は、他の保有資産の売却を余儀なくされることなくポートフォリオを再調整し、支出ニーズを満たし、好機が訪れた際に行動する余地を与えてくれます。

複数のシナリオに備えて強靭性を高める

これらの対応を取る上で、一つのマクロ経済見通しを正確に予測する必要はありません。

ショックの種類に応じて、異なる資産が異なる役割を担う可能性があります。成長が鈍化する場合には長期債、インフレやターム・プレミアムのリスクが高まる場合には短期資産、供給ショックの影響が大きい場合にはインフレに敏感な資産、資金調達コストが上昇した場合には財務体質が強固な企業が役割を担います。

これをより広い視点から言えば、次に来るショックは直近のものと似ていない可能性があるということです。

最近の原油ショックにより、インフレとFRBに再び注目が集まっていますが、この原油ショックのより大きな意義は、エネルギー、財政政策、国債の供給、地政学的分断、民間投資がいずれも資本コストに影響を与えているという、はるかに構造的な変化を明らかにした点にあるのかもしれません。

したがって、投資家にとっては、次のような問いの方がより有益かもしれません。

自らのポートフォリオのうち、インフレの低下や金利の下落に依存している部分がどれくらいあるか?

もし答えが「かなり多い」であれば、ポートフォリオに見直すべき脆弱性がある可能性を示しています。

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