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スカイラー・リース
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今回の「一問一答」では、債券ポートフォリオ・マネジャーのスカイラー・リースが、中東紛争が続く中で変化しているマクロ経済環境に関する見解を述べるとともに、新興国債券に対して引き続き強気な見方を維持している理由を説明します。また、ハードカレンシー建て債券、現地通貨建て債券、新興国通貨において、魅力的な投資機会とリスクをどこに見出しているかも示します。
Q:最近の市場動向を踏まえ、現在のマクロ経済環境をどのように捉えていますか。
A:2026年を迎えるにあたっては、当チームはマクロ経済環境に関する確信度の高い見通しとして、堅調な経済成長、中央銀行の総じて金融緩和的なスタンス、年間を通じて低いボラティリティを予想していました。しかし、過去8週間に起きた出来事によって、こうした前提は修正を迫られ、深刻なエネルギー価格ショックを踏まえて成長予測を引き下げ、利下げ見通しも調整しました。もっとも、極めて重要な点として、新興国のファンダメンタルズは非常に安定的かつ底堅いとみており、それが今後年内の見通しを決定づけています。
Q:それを念頭に、新興国債券についてはどのような見通しを持っていますか。
A:過去5年間にわたり、新興国では全般に財政の健全化が進んできました。中央銀行による確かな政策運営により、新興国はショックを吸収しやすい有利な立場にあると考えられます。現在、新興国は極めて魅力的な投資機会を提供しています。この資産クラスは非常に多様で、市場のボラティリティが高まる局面においても、柔軟に投資機会を見出すことが可能です。
当チームは次の2つを特に選好しています。
一方で、投資適格のソブリン債や社債は相対的に選好度は低いとみています。
投資適格未満のソブリン債に対する前向きな見方は、ファンダメンタルズの改善、財政健全化に加え、国際通貨基金(IMF)などの貸し手による広範な多国間支援、さらに、債券市場への依存度が高い国々における市場アクセスの良好さに支えられています。
また、新興国通貨に対する強気な見方は、ドルが構造的な下落サイクルに入っているとの見解に基づいています。ドル安は、為替によるリターンを大きく支えるだけでなく、当チームが投資対象としている国のファンダメンタルズにも恩恵をもたらすと考えています。
Q:今後、AIが新興国債券のファンダメンタルズやテクニカル要因に影響を及ぼすとみていますか。
A:先進国のクレジット市場では現在、AI関連の発行が主導的となっており、米国では投資適格債とハイイールド債の双方で債務の大きな積み上がりが進み、投資家の大きな懸念となっています。一方、新興国市場はこれとはかなり異なる動きを見せています。先進国と同様の資金調達ニーズは見られず、多くのケースでバランスシートの健全化が進んでいます。こうした新興国と先進国のクレジットにおけるファンダメンタルズの乖離は、足元の当資産クラスへの投資家の関心を支える魅力的な要因の一つであり、中期的には新興国債券のデフォルト見通しをより穏やかなものにすると考えられます。
Q:現時点で最も強く確信している投資アイデアを1つ2つ挙げてもらえますか。
A:中南米における投資機会を高く評価しています。これは、地政学的情勢の重要性が高まっていることや、従来のファンダメンタルズ要因に地政学的視点を加味した分析に基づいています。ベネズエラ、ブラジル、コロンビアといった国々は、足元ではハードカレンシー建ておよび現地通貨建ての双方において魅力的であると考えられています。
また、米国が中南米諸国への経済支援を強化するインセンティブを高めている点も背景にあります。また、当チームはドルが構造的な下落サイクルに入っているとの確信を強めています。その理由としては、米国の政策の不確実性や、懸念される債務動向があります。新興国通貨全体を見渡すと、現在、最も確信度が高いのは中南米の一部やフロンティア市場ですが、同時に中国についても、人民元に大きな上昇余地があるとみており、重要な市場と位置付けています。
Q:今後6〜12ヵ月間で注視すべき主なリスクは何でしょうか。
A:現時点で最も注視しているのは、目下の中東での紛争がどれほど長引き、激化するかです。エネルギー関連商品の在庫水準は全般的に高く、ホルムズ海峡からの供給に制約が生じても一定の緩衝余地はあるものの、その効果には限りがあります。紛争がさらに1、2ヵ月続いた場合、今後数ヵ月の間に成長とインフレのトレードオフが一段と厳しくなるリスクが高まるとみています。
これに関連して、エネルギー価格の上昇を背景にインフレ圧力が高まっており、さらに加速するリスクもあることから、各国中央銀行の政策運営は一段と複雑化しています。また、トランプ大統領が米連邦準備理事会(FRB)の次期議長にケビン・ウォーシュ氏を起用しようとしていることを受け、FRBにかかる追加的な圧力についても注視しています。
Q:ウエリントンのリサーチ体制を投資判断にどのように活かしていますか。
A:イラン紛争が続く中、世界の金融政策運営は一段と複雑化しており、中央銀行の政策担当者は成長とインフレのトレードオフに関する難しい判断を迫られています。FRBにおいては、利下げを求める政治的圧力がかかっていることから、問題は一層深刻であり、米国の政策に対する信認が世界的にさらに損なわれる恐れがあります。
ウエリントンの新興国債券チームは、社内でも特にグローバルに展開しており、ボストン、ロンドン、香港、シンガポールに拠点を置いています。このような地域に根ざした体制により、ソブリンや企業といった発行体と日々密接に対話を重ねることが可能になっています。さらに重要なのは、当チームがウエリントンの運用体制全体の中で、マクロ経済、コモディティ、株式、その他のクレジット分野の専門家の知見を活用できる立場にあることです。
過去8週間にわたる危機の局面では、エネルギー価格ショックに世界がどう対処していくかを理解しようとする過程で、ソブリンおよび企業のリサーチ担当者間の連携、さらにはコモディティのエキスパートや他のマクロ・ストラテジストも交えた緊密な協力体制に個人的に大きな感銘を受けています。