底堅い成長、高まるリスク:エネルギー・ショックの下での投資

2027-10-21
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オーエン・オキャラハン, マクロ・ストラテジスト
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主なポイント

  • 世界の経済成長は、今年、深刻なエネルギー・ショックに直面しましたが、底堅く推移しただけでなく加速さえしています。名目成長率は前年同期比5%~6%増と、20年ぶりの高い水準となっています。
  • 緩和的な金融・財政政策に加え、AI投資ブームの拡大が成長を支えており、より高くより持続的なインフレが定着しつつあります。
  • 第4四半期から2027年初頭にかけての見通しは、2つの重要な要因にかかっています。1つは、エネルギー・ショックの規模(エネルギー価格高騰の幅と期間、二次的影響の有無など)であり、もう1つは、政策対応の強度です。
  • 当チームの基本シナリオでは、世界の名目成長率は第4四半期から2027年初頭にかけて鈍化するものの、トレンドに沿った水準、あるいはそれをわずかに上回る水準で推移すると見ています。現行水準の原油価格であれば、エネルギー・ショックは経済成長率を1.5~2ポイント程度押し下げる見込みです。金融・財政政策も小幅ながら引き締め方向に向かっています。しかし、政策対応がインフレ・ショックの規模に見合うものになるとは考えにくいことから、低い実質金利が引き続き成長を支え、インフレを押し上げることになるでしょう。AI投資の伸びも引き続き支援材料となります。
  • しかし、想定されるシナリオの幅が広がり、下振れリスクがますます高まっています。イラン紛争が未解決のまま長引けば長引くほど、エネルギー・ショックの規模は大きくなる可能性が高いと考えられます。エネルギー・ショックが長期化すれば、より強力な金融引き締めが実施されるリスクがあるほか、政策対応が不十分と見なされた場合には、市場でターム・プレミアムが急速に再評価される可能性があります。また、実質所得が圧迫されているにもかかわらず、これまで底堅く推移してきた個人消費にも下押し圧力がかかりかねません。AI設備投資の先行きも景気見通しにとって極めて重要です。この点で、安全性や規制をめぐる最近の議論が投資の伸びの鈍化につながるかどうかを注視していくことが重要です。
  • プラスのテール・リスクも存在します。これには、中東紛争の解決によってエネルギー価格が押し下げられる場合や、石油供給ショックによるマイナスの影響を生産性の伸びの大幅な上昇が相殺する場合などがあります。
  • これらのテール・リスクは利回りやリスク資産にかなりの影響を及ぼす可能性があるため、年末まで注視することが極めて重要です。

エネルギー・ショックにもかかわらず、経済成長は急速に加速している

世界の経済成長は、今年、深刻なエネルギー・ショックに見舞われたにもかかわらず、非常に底堅く推移しただけでなく、実際には加速しています。当社の経済成長指標によると、名目成長率は前年比5%~6%のペースで推移しており、20年ぶりの高い伸び率となっています。

緩和的な金融・財政政策が経済成長を支え、エネルギー・ショックを吸収し、結果としてより高く持続的なインフレを定着させています。また、AIは、設備投資を通じて直接的に、それと同時に、その国の資本や労働の収益率を向上させる力による波及効果を通じて間接的に、ますます多くの国々の成長に大きく貢献しています。注目すべき点として、世界貿易量が15年ぶりの速いペースで増加している中で、製造業の先行指標が顕著に、かつ比較的幅広く回復しています。最後に、民間部門のバランスシートで過去15年間にわたって見られる債務削減も金利上昇に対する感応度を低下させています。

これからどこへ向かうのか?

年内から2027年にかけての見通しは、以下の要因にかかっています。

  • エネルギー・ショックの規模、とりわけエネルギー価格高騰の幅と期間
  • 二次的波及効果の規模
  • 政策対応の強度

名目成長率は鈍化しているものの、トレンドを上回る水準を維持する可能性が高い

私の基本シナリオとして、名目成長率は今年の10-12月期から2027年初頭にかけて鈍化するものの、トレンドに沿ってまたはトレンドをわずかに上回って推移すると見ています。現行水準の原油価格であれば、エネルギー・ショックは経済成長率を1.5~2ポイント程度押し下げる見込みです。

金融・財政政策も小幅ながら引き締め方向に向かっています。現在、市場はG10諸国全体で平均100ベーシスポイントの金融引き締めを織り込んでいます。大半の中央銀行がこれほど大幅な利上げを実施するという見方に私は懐疑的ですが、最近のエネルギー価格の上昇に対して金利がより強く反応するようになっています。また、G10諸国の財政インパルス(財政が経済に及ぼす影響)は、その大部分は米国によるものですが、今年のGDP比+0.6%から2027年には小幅なマイナスに転換する見通しです。

もっとも、政策対応がインフレ・ショックの規模に見合ったものでない限り、緩和的な政策は経済成長を支える一方で、インフレを抑制するどころか、むしろ助長することになります。また、G10諸国の中央銀行の多くでは、インフレ期待が2%の目標から乖離しており、これが実質金利をさらに押し下げています。この依然として緩和的な政策スタンスにより、成長率はトレンドに沿って、またはトレンドをわずかに上回る水準で推移する見込みです。リスク資産にとって、この状況は直近の数四半期よりも不利な環境であるものの、おおむね支援的であることに変わりはないと考えられます。

想定シナリオの幅が広がり、下振れリスクが高まる

同時に、想定されるシナリオの幅が広がり、下振れリスクがますます高まっている点には留意が必要です。

エネルギー・ショックの深刻化

イラン紛争が未解決のまま長引けば長引くほど、エネルギー・ショックの規模は大きくなる可能性が高いと考えられます。エネルギー・ショックがより長期化すれば、より強力な政策対応が行われる可能性があります。今年のエネルギー価格の倍増により、総合インフレ率が最大4ポイント押し上げられる可能性があり、価格上昇がさらに長期化すれば、コアインフレ率への転嫁がより大きくなるリスクがあります。多くの中央銀行は、大規模なエネルギー・ショックへの対応策が線形とならない可能性があることを明らかにしています。これは、エネルギー・ショックの規模がより大きく、より長期化すればするほど、一連の利上げの幅が大きくなり、ペースも速くなることを示唆しています。

また、エネルギー・ショックがより長期化し、規模も拡大する中で、金融・財政面の引き締めが不十分と見なされた場合、債券市場でターム・プレミアムが急速に再評価される可能性があります。現時点の政府財政はすでに逼迫した状況にあり、今年のG10諸国の財政赤字は平均6%近くに達します。これは、通常であれば現在のように名目GDP成長率が非常に高い局面ではなく、危機時に見られるような水準です。高利回りが財政の余裕を削りつつあるときに、市場が中央銀行のインフレ対策の本気度を疑い、政府債務の持続可能性が確保されていないと見なす場合、市場がターム・プレミアムの急上昇を通じて、政策当局が避けようとしている金融環境の引き締めをもたらす可能性があります。すでにG10諸国における7月初め以降の利回り上昇の約半分が、ターム・プレミアムの上昇により生み出されています。

一部の国の債務持続可能性に対する懸念が高まっている

財政状況が最も厳しい国々(フランス、英国、米国)を先行指標として注視すべきです。一部の国では、保守的な財政政策に対するより明確なコミットメントがなければ、売りが売りを呼ぶ展開となるような利回り水準に差しかかりつつあります。こうした利回りが続く場合、たとえ名目成長率が現在のように高い水準であっても、債務対GDP比率を安定させるために各国政府はプライマリー・バランスを3~4ポイント改善する必要があります。現在の政治環境の下で、こういった取り組みは極めて難しいように見えます。

消費リスク

エネルギー価格の高騰による実質所得の圧迫にもかかわらず、これまでのところ消費は底堅く推移してきました。消費者信頼感指数が過去最低水準付近に落ち込み、GDPに占める労働分配率が過去30年以上見られなかった低い水準となっていますが、消費者はエネルギー・ショックの影響を和らげるために進んで貯蓄を切り崩してきました。低い実質金利が家計による消費の前倒しを促してきました。しかし、賃上げや雇用の状況が年末にかけて改善せず、インフレ上昇による実質所得の圧迫が緩和されない場合、景況感と消費の乖離は悪い方向(消費の減少)で解消する可能性があります。

AI設備投資が極めて重要

長期化かつ大規模化するエネルギー・ショック以外で注視すべき最も重大な成長下振れリスクは、AIが生み出すリターンや、企業がそのリターンをどの程度獲得できるかについての見方が見直されることで、AI設備投資が減速するリスクです。この点において、安全性や規制をめぐる最近の議論がAI投資の重しとなる可能性があることは注視すべき重要なリスクです。

プラスのテール・リスクとは何か?

まず、中東の石油供給の混乱が解消されれば、原油価格は急落する可能性があります。プラスに働くもう一つのテール・リスクは、生産性の伸びが加速することでプラスの供給ショックが生じ、規模が十分に大きければ、原油によるマイナスの供給ショックを相殺する可能性があります。生産性の先行指標は以前からこの方向を指し示していますが、これまでのところ、生産性の伸びはあったとしても限定的なものに留まっています。

市場の反応により、各国間の乖離が拡大する可能性

市場は、信頼できる政策をより評価し、不適切な政策には一層厳しい評価を下すようになる可能性があります。7月から続く直近の利回り上昇局面では、G10諸国全体にわたって金利見通しがほぼ無差別に上方修正され、原油価格の上昇と歩調を合わせて利回りが急騰していることは注目に値します。しかし、エネルギー価格の上昇は、エネルギーの純輸入国か純輸出国かに応じて、国ごとに非常に不均衡な影響を及ぼしています。2次的影響のリスクも国ごとに異なります。政策当局者がどの程度、正統的手段で対応するかは国によって異なるでしょう。市場はこの各国間の違いを価格にますます織り込んでいくと当社は予想しています。正統的な中央銀行を有し、当初の財政状況が比較的良好なドイツやオーストラリアなどの債券や通貨は、中央銀行の信頼性がより低く、債務状況がより不安定な国の債券や通貨に比べて、相対的に良好なパフォーマンスになると考えています。

世界経済を見通す上で重要な局面

要するに、私たちは世界経済を見通す上で重要な局面にいるのです。今年はこれまでのところ、金融緩和政策とAI関連の成長がエネルギー・ショックによるマイナスの影響を相殺しても余りあるほど大きく、インフレをさらに押し上げました。民間部門の財務体質は健全で、利上げの影響をそれほど受けていません。これまでのエネルギー価格の上昇とそれに対する政策対応は名目成長率の重しとなるものの、成長そのものを損なうほどではないとみています。

しかし、石油市場や消費者にとって、現状は安定した均衡状態にあるとは言えません。エネルギー・ショックが拡大し続け、政策対応がさらに強力になる場合、下振れリスクが高まり、一部の国々において財政の不安定な状況が露呈する可能性があります。このショックが長期化し、規模が大きくなるほど、消費者は実質所得が圧迫される中で支出を維持し続けることがますます難しくなります。逆に、原油価格の軟化や生産性の大幅な向上があれば、今年前半に見られた良好な経済環境へ速やかに回帰する可能性があります。投資家は、今後数か月間、変化し続けるマクロ経済情勢を注視する必要があります。

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