長期的なエネルギー・ショックは信頼性の喪失を加速させる可能性が高い
これまでの先進国中央銀行による米イラン紛争への対応は、インフレ期待をさら不安定にするリスクがあります。当初のタカ派的な発言は様子見姿勢に取って代わられましたが、このアプローチは、賃金上昇が加速しない場合には、不要な政策引き締めを回避できる一方、賃金が上昇した場合には後手に回ることを実質的に容認するものとなり、賃金に対する二次的影響への対応が一層困難になります。
財政面では、この紛争は金利の上昇を通じて各国の債務見通しをさらに悪化させる一方、危機が長期化するにつれて、さらなる大規模な刺激策が実施される可能性も高まっています。これまでのところ、財政措置によってエネルギー・ショックを相殺する動きは2022年と比較して限定的ですが、一部の国(執筆時点で日本、スウェーデン、ドイツ)はエネルギー価格の上限設定や引き下げを実施し始めています。
市場の反応の高まり
コロナ禍以降、政策当局のインフレ対策や財政に対する信頼性の低下は、ゆっくりとしたペースで進んでいるものの、債券・為替市場ではこの信頼性低下がしだいに織り込まれつつあると考えています。中期的なインフレ期待が目標を最も大きく上回っている国々では、10年物と30年物を結んだイールドカーブが最も急勾配となっています。また、イールドカーブの勾配と政府債務の持続可能性との間には非常に強い逆相関があり、財政状況の持続可能性が低いほど、イールドカーブは急勾配になっています。なかでも、最も不適切な金融政策を続け、政府債務指標も厳しい水準にある日本では、イールドカーブの長期ゾーンと通貨の両方で特に大きな変動が生じています。
投資への具体的な影響
投資家にとって重要な点は、政府と中央銀行の政策に対する信頼性がますます重要なリスクの源泉になりつつあるだけでなく、非常に厳しい状況にある国々などでは潜在的なリターンの源泉にもなりつつあるということです。この点で日本、英国、フランス、米国は注視する必要があります。
1970年代には、インフレを管理できなくなり、財政の信頼性を失うと、広範囲で資産の相対的な価値低下につながる可能性があることが極端な形でみられました。英国などの国々は、1974年の第1次オイルショックの際にインフレの安定よりも名目成長率を優先しました。その結果、極めて高い名目成長率を実現したかもしれませんが、その成長の大半はインフレの加速によるものだったため、英国は、最も低いリスク資産のパフォーマンス、最も高い債券利回り、そして最も弱い通貨に直面しました。インフレが中程度の水準である場合には、名目成長率が高い方がリスク資産にとって好ましいものの、インフレが急加速すると事態は異なります。70年代、ドイツのように政策引き締めを維持した国々はより大きな経済的な痛みを伴いましたが、最終的にはより高い資産パフォーマンスを実現しました。
50年前のような大規模な石油ショックにはまだ及ばないものの、現在進行中の紛争が、市場が予想しているよりも大幅に長期化すれば、こうした状況が再発するリスクは高まります。