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債券利回りの上昇、持続的なインフレ、財政の不確実性の高まりを背景に、インカム投資家が債券やクレジット市場においてこれまで以上に複雑な投資機会に直面する中、ケビン・ウォーシュ氏が米連邦準備制度理事会(FRB)の議長に任命されました。
利回り上昇により、インカム収益を得る機会が再び拡大していますが、その機会を活かすには、世界金融危機後の低金利時代に投資家が採用していたものよりも、慎重なアプローチが必要になる可能性があります。
当社の4名の専門家に、投資家が考慮すべき投資上の示唆、機会、リスクについて見解を聞きました。
足元の利回り上昇により、債券が魅力を取り戻しています。特に、利回り低下による値上がり益に依拠せずにインカムを追求する投資家の間で注目を集めています。しかし、投資開始時点の利回りは全体像の一部に過ぎません。インフレや財政政策、債券供給の不確実性の高まりを背景に、金利の変動幅が拡大し、株式相場の下落に対する債券のヘッジ効果が薄れる期間がより頻繁に現れる可能性があります。そのため、ポートフォリオ構築がますます重要になります。投資家にとって、明確な目的、柔軟性、強靭性を軸とした枠組みに基づいてポートフォリオを構築することが有効となる可能性があります。
「明確な目的」とは、まず債券への資産配分の役割(インカムの確保、元本の保全、ポートフォリオの分散、流動性の維持)を明確にし、次いで、その役割を果たすために取るデュレーション・リスク、クレジット・リスク、流動性リスクを特定することです。魅力的な利回りは、価格下落を吸収するクッションとして役立ちますが、利回りが魅力的だからといってすべての債券やクレジット資産への投資が魅力的になるわけではありません。これは、柔軟性が重要であることを示しています。
「柔軟性」とは、シンプルに言えば、固定的な資産配分や慣れ親しんだ関係に依存することなく、デュレーションとクレジットを別個の投資判断として扱うことを意味します。状況の変化に伴い、投資家はデュレーションとクレジットのポジションをそれぞれ独立して調整することが必要になる場合があります。より幅広く機動的なインカム投資の選択肢を活用することで、単一の市場、資産クラス、あるいはマクロ経済シナリオに依存せず、異なるリターン源泉にアクセスすることも可能になります。
最後に、「強靭性」とは、債券が引き続き重要である一方で、ポートフォリオの防御を全面的に債券に依存することはできないということを認識することを意味します。投資家は、債券から得られるインカムの向上と、流動性、相関の低いリターン源泉、下落局面に対する防御をもたらす多様な源泉とを組み合わせるべきです。端的に言えば、現在の投資機会は以前よりも有望ですが、それを活かすには、より慎重かつ柔軟なアプローチが必要です。
今日の市場における最も重要な変化の一つは、インカムが再びトータルリターンに対して有意義な貢献をしているという点であると考えています。
リーマンショック後の期間の大半において、投資家はリターン目標を達成するために、多くの場合、利回りの低下または資産価格の上昇に頼ってきました。現在、投資家は過去10年間の大半の期間よりもはるかに高い利回りを確保することができ、インカムがリターンのより大きな割合を占めるようなポートフォリオを構築する機会が生まれています。
FRBの新体制によって政策金利が必ずしも大幅に上昇するわけではないと考えています。むしろ金融政策では、インフレ抑制に対する信認を維持することが、これまで以上に重視される可能性があります。このことは、投資家にとって、長期債利回りが、FRBの政策だけでなく財政赤字や国債供給量、企業の資金調達ニーズ、ターム・プレミアム動向によってますます影響を受けるような世界を意味します。
その結果、金利動向は予測しづらくなる可能性があり、金融緩和局面でもボラティリティが高まる時期があるかもしれません。実質成長率よりもインフレが重視される場合、債券は2021年以前に投資家が慣れ親しんできたような分散効果を発揮しなくなる可能性があります。
重要なことは、マルチアセット・インカム投資機会の中で、債券だけでなく、それ以外にも投資家は目を向けるべきだということです。クレジット・スプレッドが比較的タイトな水準で推移する中、特にボラティリティが高い市場環境では、株式インカム戦略やオプション売却戦略が、インカムと成長余地を補完するリターン源泉となる可能性があります。
主なリスクは、投資家がFRBの政策動向に過度に注目するあまり、市場を大きく変えつつある、より広範な構造的要因を見落としてしまうことです。分散投資や機動的なエクスポージャー管理、複数の真に差別化されたインカムの源泉を通じて、耐性のあるポートフォリオを構築することがますます重要になると考えています。
ウォーシュ議長の就任は、フォワードガイダンスを抑え、物価安定と中央銀行としての信認を一段と重視する方向への転換を示す可能性があります。これにより、投資家は主として政策金利を見て市場の方向性を判断してきましたが、今後は、金融環境を決定する上で市場利回りやターム・プレミアムがより大きな役割を担う可能性があると考えています。米国の経済成長は底堅く、インフレ率も依然として目標を上回っていることから、金融緩和のハードルは依然として高く、政策金利は上昇リスクの方が高い状況が続いています。
また、財政赤字や資本集約的AI投資サイクル、持続的インフレによって、コロナ禍前に一般的だった水準よりも実質金利が構造的に高く保たれる可能性があります。一方で、今日の当初利回りの上昇は魅力的なインカムをもたらすだけでなく、投資家が2022年初頭に保有していた時と比べて、価格下落に対するクッションの役割がより大きくなっています。
このような環境では、「デュレーションとクレジットのエクスポージャーは明確に異なる投資判断である」というポートフォリオ構築の重要な原則がいっそう当てはまる、と考えられます。供給主導のショックによって、利回りとクレジット・スプレッドが同時に上昇する局面もあり得ます。そのため、当社は、マクロ経済見通しやレラティブ・バリュー投資機会に基づき金利エクスポージャーをアクティブに運用する一方、これとは別個にクレジット・リスクを調整しています。この柔軟性により、クレジット・ベータを自動的に増やしたり、ヘッジ手段をデュレーションのみに依存したりすることなく、魅力的なインカムを追求することができます。
この区別が重要なのは、利回りが魅力的だからといって必ずしもそのクレジット資産価格が割安だとは限らないからです。指数全体のスプレッドは依然としてタイトな水準ですが、セクター間・発行体間のばらつきは通常以上に大きくなっています。複数のセクターにまたがる幅広い手段を活用することによって、将来、市場に価格の歪みが生じた際に投資機会を捉えられるよう流動性を維持しつつ、リスクに対してより適切な対価が得られると考える分野(現状では、一部のハイイールド債、新興国社債、魅力的な担保付きキャッシュフローと構造的な保護策を伴った証券化資産、転換社債など)に資金をシフトさせることができます。現在の環境下では、単に幅広くクレジット・ベータを保有するよりも、アクティブなセクター配分や銘柄選択がはるかに重要となる可能性があります。
投資家は当然のことながら新FRB議長の見解に注目していますが、一方、金融政策は依然として連邦公開市場委員会のプロセスによって決定されます。FRBの政策対応では、個々の政策担当者の意向よりも今後発表される経済指標の方が重要になる可能性が高い、というのが当社の見解です。アジア社債投資家にとって、この違いは重要です。
金利以外の分野でFRBの影響力を縮小したいというウォーシュ議長の考えは、バランスシートを縮小し、フォワードガイダンスへの依存度を引き下げる取り組みの強化につながる可能性があります。こうした変化は時間がかかり、リスクを伴うかもしれませんが、FRBの信頼性の維持に最も重きが置かれる可能性が高いと考えられます。
投資の観点から言えば、当社はデュレーションについて1年以上にわたり慎重な立場を取ってきました。基礎となる名目成長と支出の底堅さを市場が過小評価していると考えたからです。財政赤字が(金利の上昇に)一定の影響を及ぼしていますが、企業の設備投資、とりわけAI関連の投資も同様に影響を及ぼしています。このAI関連の設備投資は引き続き企業の利益や収益性を押し上げる要因となっており、社債市場に対する当社の前向きな見方を支えています。
アジアは2026年、輸入エネルギー・コストへの感応度の高さからこの地域固有の課題に直面しました。これは、一部の国では成長鈍化や通貨安という形で表れましたが、企業業績が基本的に底堅く推移したため、スプレッドのボラティリティは抑制されました。
こうした状況下で、当社は引き続きアジア社債市場で魅力的な投資機会を見出しています。ハイイールド債に関しては、多くの発行体のファンダメンタルズが依然として堅調であり、信用力の改善がまだバリュエーションに十分に反映されていない場合には、魅力的なキャリーが得られます。インド、タイ、マレーシアなどの国々では、投資価値のある銘柄が点在しています。投資適格債に関しては、当社は一般企業よりも金融セクターを好んで選択しています。特に、香港とシンガポールの銀行や保険会社は耐性、強固なバランスシート、魅力的なレラティブ・バリューを兼ね備えています。
一方で、AI関連セクターにおける債務調達による設備投資の拡大に伴うリスクや、2027年に成長が鈍化する可能性には、引き続き注意が必要です。全体として、企業の底堅いファンダメンタルズと、ハイイールド債・金融債の双方における発行体ごとの選別的なアプローチが、アジア社債に対する当社の前向きな見通しを引き続き支えていると考えています。