2026年下半期 アセット・アロケーションの見通し 相場上昇と現実

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2027-07-30
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スプリヤ・メノン, マルチアセット・ポートフォリオ・マネジャー
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ジョシュア・リーフラー, プロダクトレポーティング責任者
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主なポイント:

  • グローバル株式に対する見解をオーバーウェイトに引き上げました。地政学的な逆風の中でも、企業は引き続き堅調な業績を上げており、世界経済は、地域差はあるものの底堅さを保っています。株式のバリュエーションも、過去数四半期で妥当な水準へ調整されました。利益成長は引き続き堅調に推移する見込みですが、その大半はAIサプライチェーンを通じた需要に支えられると考えられます。市場の一部では利益成長が上向いているものの、相場上昇はまだ狭い範囲にとどまっています。
  • 株式市場では、欧州市場よりも新興市場 (EM) を選好しています。サプライチェーンで重要な役割を占めるアジア新興国は、AIのテーマから恩恵を受けると思われますが、インドと中国の見通しの改善も追い風となる可能性があります。欧州では、1株当たり利益(EPS)の予想が非現実的なほど高水準にとどまっており、スタグフレーションの影響が深刻化するおそれがあると見られます。
  • 市場では世界的な金融引き締めがすでに織り込まれています。短期的には、インフレからスタグフレーションまで、さまざまな懸念が市場の焦点となる可能性が高く、各国中央銀行もタカ派姿勢に転じています。しかし、実質利回りの上昇は国債を選好する好機となります。クレジットに関しては、スプレッドの大幅な縮小を受けて中立に転じました。
  • コモディティについては、原油を中心に小幅なオーバーウェイトとしています。中東からの輸出や需要の増加を巡り、依然として大きな不確実性は残っているものの、原油市場はすでに再び供給過剰となることを織り込んでいます。
  • 下振れリスクとしては、個人投資家のレバレッジの高さ、米国と新興国への市場集中などが挙げられます。また、大型IPOによる新規発行株式を市場が消化できるかどうかや、AI設備投資への期待が大きく変化し、AIブームの崩壊につながるのではないかという点が懸念材料となる可能性もあります。同様に、急激な金利上昇や米ドル高も下振れリスクと考えられます。上振れ要因としては、中東紛争の終結や原油供給の回復に伴う中央銀行による利下げへの期待が再び高まることが挙げられます。IT以外のセクターにも物色が広がれば、株式市場にとってプラスの兆候となります。
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概要

地政学リスクとの綱引きが続く中でも、マクロ経済や市場環境は予想外に上向いています(図表1)。ホルムズ海峡を通過する海上輸送は徐々に回復していますが、エネルギー供給は依然として大きな混乱に直面しており、インフレリスクはイラン戦争前よりも高く、欧州など一部の地域ではスタグフレーションの圧力が高まっています。

では、経済や市場の底堅さを支えている要因は何でしょうか。AI主導の企業業績の急拡大により、市場は地政学的混乱の影響を吸収することができています。その適応力を示す証拠として、企業は不確実性が極めて高い環境下でも市場予想を上回る業績を達成しており、業績期待が高まった結果、株価は割安感が非常に強まっています。堅調なAI需要とコンピューティング、メモリ、電力の分野における供給制約が相まって、AI投資サイクルは2027年~2028年まで長期化しています。さらに、AIのボトルネックにより価格決定力が強まることで、魅力的な投資機会が生まれています。

政策面では、大半の中央銀行がインフレ対策に対する信頼を得るために迅速に対応を進めており、成長鈍化の兆候がみられてもある程度は容認し、インフレ抑制のためにタカ派姿勢をとる意思を示しています。6月に欧州中央銀行がいち早く利上げに動いたのに続き、他の中央銀行も、同様にインフレ対策を重視した動きに踏み切る可能性があります。

原油価格に関しては、最悪のシナリオが回避された理由の1つは、各国が備蓄を大規模に取り崩したことです。また、中国やその他の国の豊富な備蓄も圧力を和らげる一因となりました。ただし、原油の在庫水準の低下を踏まえると、ホルムズ海峡の航行の正常化が遅れれば、原油価格の上振れリスクは高まります。

バリュエーションがより適正な水準になる中で大幅な利益成長が見込まれるため、株式に対する見解をオーバーウェイトへ引き上げ、欧州株式よりも新興国株式を選好しています。クレジットについては、スプレッドが大幅に縮小したことを受けて中立に転じましたが、グローバル・デュレーションについては小幅なオーバーウェイトの見解を維持しています。ブレークイーブンインフレ率は大幅に低下しましたが、多くの地域では実質利回り、特にイールドカーブの短期ゾーンの実質利回りが高すぎると考えられます。

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株式

中東紛争の影響はあるものの、業績予想の上方修正と底堅い製造業サイクルを背景に、株式市場は良好な状況が続いています。世界的な企業業績とマクロ経済サイクルの底堅さは、現在進行している技術シフトの影響の大きさと、それを原動力とする設備投資の波の表れと考えています。

日本を除くほぼすべての市場で、年初来の株価上昇はその殆どがEPSの成長を原動力としてきました。企業利益の伸びと結び付いて株価が上昇してきたことから、バリュエーションは低下しているため、今後これが足かせになることはないと考えられます。

今後については、市場のパフォーマンスは企業の業績見通しに左右されると考えています。グローバル株式のEPS成長率は今後12カ月で10%台前半から半ばになると予測しており、バリュエーションにも多少の拡大余地があると見ています。短期的および中期的なEPS成長への期待の高さは妥当だと考えています。利益以外でも、企業のバランスシートは健全であり、負債比率は比較的低く、営業キャッシュフローの対負債比率は高い水準にあります。

株式市場では、物色が広がり始めている兆候があります。例えば、AI関連の大型銘柄のすそ野にある企業(AI主導のインフラ整備、半導体、エネルギー、その他の経済分野を支える企業など)に対しても市場の関心が高まっています。米国市場では最近、小型株のパフォーマンスが大型株を上回っていることや、ハイパースケーラーのパフォーマンスが資本財・サービスや金融などのセクターを下回っていることも、ローテーションがある程度進んでいることを示しています。このようなローテーションの中でボラティリティが高まっていますが、こうした動きに起因するテクニカルな調整局面があれば、堅調なファンダメンタルズを踏まえ、ポジションを積み増すための戦術的な好機になると考えています。

米国株については、中立的な見解に移行しました。利益成長は引き続き堅調で、バリュエーションは妥当と見られます。今年はIPOが相次ぎ、純発行額はプラスか中立的な水準となる見込みです。市場はこのような新規発行を吸収できると予想しているものの、純発行額の増加と案件の大型化により、今後12カ月間は、株式供給が市場にとってやや逆風となる可能性があります。また、幅広い投資家層全体ではポジションの偏りは確認されていませんが、レバレッジ型ETFなど一部の分野では過熱感を示す兆候が見られます。

英国を除く欧州と英国では、業績予想が高すぎる水準にとどまっており、スタグフレーションへの懸念がより台頭していると考えられます。フランスとドイツは中国との競争により打撃を受けており、2027年のフランス大統領選を前にした政情不安に関するリスクも市場心理に対する重しとなる可能性があります。ただし、我々は欧州に対して弱気な見方を持っているわけではなく、欧州連合(EU)における金融市場改革の進展や、予想を上回るペースでのドイツの財政刺激策の実施など、ポジティブサプライズも見込めることを強調しておきます。

欧州株式よりも、新興国株式に対する見解の方が確信度は高いと言えます。アジアの新興国市場は、AIのサプライチェーンで極めて重要な役割を果たしています。また、中東紛争の期間中は中国の底堅さが際立ちました。

日本については中立としています。株式市場では、自社株買い、自己資本利益率(ROE)の高さや改善、そして企業改革の恩恵が引き続き見られますが、一部の指標に基づくバリュエーションがここしばらく見られなかった割高な水準になっているため、金利や為替の変動による反動が懸念材料となっています。

債券

米国とイランが和平合意に向けた協議を開始したことを受けて、利回りはやや低下したものの、継続的なインフレリスクや中央銀行のタカ派的な姿勢を背景に、依然として高水準にとどまっています。今回の危機の中でも世界経済は、特に米国を中心に、おおむね底堅く推移しているため、一部の中央銀行には、利上げを通じてインフレ対策に注力する余裕があります。しかし、市場は今後の金融引き締めを過大評価している可能性があります。紛争が根本的に解決されれば、エネルギー価格主導のインフレ圧力は和らぐ見通しです。さらに、インフレの二次的な影響が限定的であることや、実体経済が減速している兆候を重視する政策が進展すれば、中央銀行がタカ派的な発言を貫き通す意思があるかどうかが試される可能性もあります。

こうした中で、国債は名目金利、実質金利ともに水準が上昇しており、魅力が高まっています(図表2)。購入時の利回りは長期的なトータルリターンを左右する重要な要因であり、現在の高水準の利回りは、潜在的なキャリーとリターンを高めていると考えられます。また、インフレが落ち着き、成長が鈍化するシナリオでは、高い利回りは、株価下落時に下方リスクを抑制する分散手段としての国債の役割復活の要因になる可能性もあります。

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日本国債については、小幅なアンダーウェイトから中立に引き上げました。日本では、日本銀行の金融引き締めが依然として後手に回っていることもあり、インフレリスクが高まっています。しかし、このようなリスクはかなりの程度市場に織り込まれているため、主要地域の中でキャリーコストの負担が最も大きい10年物日本国債で単独のポジションをとる魅力は薄れています。

世界的に見ると、財政リスクの織り込み方の違いが、魅力的なレラティブバリュー投資の機会につながる可能性があります。特にフランスでは、EUの財政目標の未達を背景に、国内政治の不透明感が高まっている点を注視しています。その他の国では、防衛費の追加支出により財政出動論が強まる可能性があり、こうした支出は国債の供給増加につながる一方で、長期的な需要への信頼が損なわれるおそれがあります。

クレジットについては、中立的なスタンスに引き下げました。オールイン利回りは魅力的だと考えられますが、スプレッドは再び大幅に縮小しており、下振れリスクに対する見返りは限定的です。そのため、クレジットに対するオーバーウェイトの見解を取り下げましたが、ファンダメンタルズが良好であることから、引き続き欧州のクレジットを選好しています。AI関連の設備投資や資金調達活動を含む発行の増加は、テクニカル面で重しとなる可能性がありますが、セクター間や発行体間の格差が拡大し、より選別的な投資機会の支えとなる可能性もあります。全体として、リスクとリターンは均衡して見えるため、中立の見解が妥当だと考えられます。

コモディティ

原油価格の急落を受け、原油については小幅なオーバーウェイトに移行しました。市場は短期的な供給不足から中期的な供給過剰へと焦点を移しつつあります。しかし、中東からの輸出再開や需要増加、供給拡大(ホルムズ海峡を迂回する新たなパイプラインの開発など)を巡る不透明感が残る中でも、市場は今後の供給過剰の大半をすでに織り込んでいます。

循環的な需要面では、米国を含む多くの国は、紛争中に備蓄を大幅に取り崩したため、備蓄を補充する必要があります。一方、構造的な需要についても、特に中国が再生可能エネルギーに注力していることから、不透明感が残ります。

供給面に関しては、多くの中東諸国では財政均衡油価が生産コストを大きく上回っているため、OPEC加盟国がOPECの合意を無視したり、5月のアラブ首長国連邦のようにOPECからの脱退を検討したりするような動きは控えられる可能性があります。

したがって、目先の原油市場の環境は非常にバランスが取れており、ファンダメンタルズの上振れ余地を踏まえると、小幅なオーバーウェイトの見解は妥当だと考えられます。さらなるリリーフラリーが生じる可能性はあるものの、特に中東紛争の根本的な解決やホルムズ海峡往来の全面的な再開の見通しがまだ流動的であるため、リスク・リターンは非対称的だと考えられます。

金については、小幅なオーバーウェイトから中立的な見解に引き下げました。2つの需要(中央銀行とETF)を原動力とするシナリオから、1つの需要(中央銀行)のみを支えとするシナリオへと構図が弱まったため、確信度が大きく低下しています。以前にも述べたとおり、金価格とインフレ率との間の相関関係は弱いか、まったくないため、我々は金をインフレヘッジとは考えていません。長期的に最も強い関係は、金価格と、米ドルおよび実質利回りとの間の負の相関です。どちらによっても大きな上昇余地はないと見られますが、ファンダメンタルズに基づいて米ドルに対する強気見通しが再び強まることはリスク要因になります。

投資への影響

分散投資の機会を探る — エネルギーに対する脆弱性に応じて地域間やセクター間でリターンがばらつくことがあるため、アクティブポジションによってパッシブベータを上回る付加価値を得られる機会が生まれます。

AIブームは引き続きマクロ経済と決算サイクルの原動力となりうる — 米国と新興国(EM)の企業業績は好調に推移するとの見方を維持しています。米国ではAIイノベーションというテーマが継続していること、そして新興国ではアジア地域がAIインフラを支える生命線となっているためです。このテーマは今後も進化していく可能性があり、AIモデルの利用効率が高まれば、AIの普及の拡大につながると見られます。

国債利回りの急上昇に乗じる方法を検討する — 原油価格の上昇に伴い、中央銀行に対する市場予想は利下げから利上げに転じました。この動きによって世界の利回りは魅力的なバリュエーションに達していますが、特に原油高が成長の足かせとなる可能性を踏まえると、リプライシングは行き過ぎていると考えています。地域間の利回り格差から生じる投資機会に注目することを推奨します。

クレジット市場は底堅く推移する見通しだが、スプレッドが縮小しているため、投資機会は限られる可能性がある — スプレッドは大幅に縮小しており、現在の水準では投資価値は乏しいと見られます。欧州のクレジット市場の方が、債務返済能力やレバレッジの面で米国よりもファンダメンタルズが良好であり、米国のプライベートクレジット問題の影響も受けにくいと考えています。新興国債券のスプレッドはイラン戦争前の水準まで縮小していますが、機会に応じてポジションを積み増すことは検討に値するかもしれません。

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図表1で用いられている指数:株式:MSCI USA指数、MSCI Europe指数、MSCI Japan指数、MSCI Emerging Markets指数。債券:ICE BofA Global Government指数、ICE BofA Corporate指数(投適格債)、 ICE BofA Global High Yield指数、JPMorgan Emerging Markets Sovereign(EMBI Global Core)。コモディティ:Dow Jones Commodity指数(原油)、Dow Jones Commodity指数(金)

図表2で用いられている指数:名目利回り米国のジェネリック10年国債利回り、ユーロ圏の10年国債利回り(ドイツ国債[ブンズ]、フランス国債[OAT]、イタリア国債[BTP]から成るウエリントン総合指数)、英国のジェネリック10年国債(ギルト)利回り、日本のジェネリック10年国債(JGB)利回り。実質利回り:米国10年物価連動国債(TIPS)の実質利回り(一定年限)、ユーロ圏10年実質利回り(ドイツ、フランス、イタリアの物価連動債から成るウエリントン総合指数)、英国10年物価連動国債の実質利回り、日本10年物価連動国債の実質利回り。

 

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