AIの「マグニフィセント・セブン」:人工知能のエコシステムを理解する

4 分 で読めます
2027-08-31
アーカイブ info
アーカイブの記事内の作成者の見解は、過去の作成時点の情報に基づくことをご留意ください。
885294104

主なポイント

  • 人工知能(AI)を個々の銘柄やテクノロジーとしてではなく、相互につながるエコシステムとして捉えることは、AIの成長がもたらすダイナミックで時に変動の大きい環境に対応する上で役立つ可能性があります。
  • このエコシステムは、それぞれ異なる役割を担いながら、相互に影響を及ぼす可能性がある7つの企業カテゴリーに整理できます。
  • AIに必要なインフラを提供する企業は、AIという投資テーマへのエクスポージャーを得る上で、魅力的な選択肢となる可能性があります。

投資家らは、AIが重要かどうかという議論の先へ進んだように見受けられます。彼らの関心は、より難しい問題に移りつつあります。すなわち、AIエコシステムのどの部分が、創出されつつある価値を最終的に獲得するのか、という問題です。

このように変化が速く流動的な環境では、長期的な技術進歩と公開市場における短期的な期待が、足並みをそろえて進む可能性は低いと考えられます。むしろ、変化を続ける事業やテクノロジーの実態を、投資家心理が過大評価または過小評価する局面が今後も続く可能性があります。こうした状況が続く中、AIエコシステムへの理解を深めることは、ボラティリティや不確実性に向き合う投資家の助けとなる可能性があります。

二元論的思考を超えて

新たなテクノロジーの潜在的影響を評価する際に、新たなテクノロジーが既存の業界や企業に恩恵または悪影響をもたらす可能性に基づいて、「勝者」と「敗者」のリストを作りたくなるものです。しかし当社は、AIの進化と普及によって、企業や業界が勝者と敗者という二つのカテゴリーに明確に分かれるわけではないと考えています。むしろ、多くの企業がAIからプラスとマイナスの両方の影響を受ける可能性があります。

勝者と敗者を選別するのは難しいでしょうし、これらの企業をめぐる市場の見解は常に変化しています。こうした見解や見通しが変化するにつれて、投資家心理の変化が、当該企業の株式への資金流入または資金流出につながることがよくあります。

例えば、投資家は、ハイパースケーラーとも呼ばれる著名な大手テクノロジー企業をAIの主要な受益者とみなして、これらの企業の株式を高い対価を支払ってでも買うときがあるかもしれません。

しかし、別のときには、ハイパースケーラーの設備投資が高水準である点に焦点を移し、これらの銘柄へのエクスポージャーを減らすことを選択するかもしれません。どちらの場合も投資家は同じファンダメンタルズについて検討しているものの、それらに異なる評価を与えています。その結果として、ボラティリティが高まり、投下資本から収益が得られるのか不安が生じます。投資家心理がこのように行ったり来たりする状況が過去2年間見られました。

AIエコシステムを構成する7つのカテゴリー

  1. ハイパースケーラー:著名な大手テクノロジー・プラットフォーム企業はAIインフラに多額の投資を行っています。これらの企業はエコシステム内で大規模な資本配分を行う主要企業です。このグループに関する重要な問題は、現在の支出レベルを正当化する収益が最終的に得られるかどうかです。
  2. インフラ・サプライヤー:これらの企業は、AI開発に必要な基礎的ツールやコンポーネント(構成要素)を提供しており、AIエコシステムのより広範な構築を可能にします。
  3. クローズドモデル・プロバイダー:これらの企業は、独自の大規模言語モデル、またはいわゆるフロンティアモデルを開発する企業です。
  4. オープンモデル・プロバイダー:オープンソースの代替モデルを開発している中国や米国の企業は、AIエコシステム内の別個の競合勢力として存在しています。
  5. 生産性向上の恩恵を受ける企業:これらの企業は必ずしもテクノロジー企業ではありません。換言すれば、これらの企業は生産性の向上やコストの削減、効率性の改善など、業務をより良く行うためにAIを利用する組織です。
  6. AIによって事業が大きく変化する可能性がある企業:ソフトウェア企業など、AIによって悪影響を受ける可能性がある企業が該当します。こうした企業がどの程度影響を受けるかについては議論の余地があり、最終的な結果もまだ明確ではありません。
  7. 新たな事業モデル:これらはAI技術の進歩から生じるとみられ、1990年代や2000年代にワールド・ワイド・ウェブが拡大したときと同様、既存の企業と全く新しい企業の両方から生じる可能性があります。

「つるはしとシャベル」に着目するアプローチ

AIの普及が現代のゴールドラッシュのように見えるなら、マーク・トウェインの言葉「誰もが金を掘っている時には、つるはしとシャベルを扱う商売がよい」を思い出してください。

AIインフラの「つるはしとシャベル」としては、発電機、タービン、電気機器、冷却システム、建設・掘削機器、計算能力の大規模な拡張に必要な設備などがあります。インフラへの大規模な設備投資が進む中、こうした企業の製品に対する需要は旺盛です。

実際に、こういった設備投資は進んでいます。一部の大手AI企業では、最近の売上高の急成長がコンセンサス予想を上回っており、AIの規模と収益機会を市場が過小評価しているという当社の見方が改めて裏付けられました。実際、構築されつつある事業の規模とそれに伴う利益の伸びを市場は過小評価している、と当社は引き続き考えています。当社の予想は、12ヵ月前には想定できなかったほどのペースで引き上げられています。そして、12ヵ月前にも同様の見方を示していました。

こうした背景から、AIインフラ株を取り巻く環境は引き続き良好であると考えています。長期的な計画/需要を背景に2028年以降の継続的成長の見通しは上向いている模様で、多くの主要指標はAI設備投資の継続的拡大を示唆しています。

産業用AI関連銘柄を一括りにして考えている投資家がいるのは確かですが、それは間違っています。過去12ヵ月間には相対的な勝者と敗者が存在し、今後もばらつきが拡大する可能性が高いと考えられます。広範な産業用AIサイクルの内部には、発電機・タービン、電気機器、冷却システム、建設・掘削会社をはじめ、多数のサイクルが存在します。より広範なAIサイクルが継続する一方で、こうした「サブサイクル」の一つまたは複数が急速に失速することも十分に考えられます。AIによる生産性向上の恩恵は今よりもはるかに広範囲にわたってビジネスや経済に行き渡る可能性がありますが、多くの投資家は現時点でこうした将来の恩恵を十分に評価する意思も能力も持ち合わせていません。

これらの理由から、急速に進化するAI分野への投資では、銘柄選択、リサーチ、アクティブ運用に加えて、AIエコシステムを包括的に理解することが重要になると当社は考えています。AIへのエクスポージャーを持つ銘柄群に幅広く分散投資するだけでは、この独自性が高く、変革をもたらすテクノロジーの可能性を十分に捉えられない可能性があります。むしろ、充実したリサーチ能力を備え、テクノロジーの進化や市場環境の変化に伴って市場をけん引する企業や銘柄が移り変わる可能性を認識しているアクティブ・マネージャーは、この新たなAI時代において、リスクを管理しながらリターン獲得を目指す上で、より有利な立場にある可能性があります。

Andrew Heiskell

アンドリュー・ハイスケル

株式ストラテジスト
brian-barbetta

ブライアン・バーベッタ

グローバル・インダストリー・アナリスト

関連コンテンツ