【2024年市場展望】

重要性高まるサプライチェーンの透明性

2024-12-16
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※下記コメントは2023年12月(米国時間)時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。

主なポイント

  • サプライチェーンはマクロ経済とミクロ経済両面におけるリスクの源です。
  • 私たちは、企業のサプライチェーン内のリスクと投資機会を特定するためには透明性の向上が必要であると考えています。
  • 明確化することにより、企業がサプライチェーンの混乱に伴うコスト発生を未然に防ぎ、炭素や水といった原材料のコストが上昇した場合にサプライヤーへの影響を緩和することができる可能性があります。
  • 2024年、当社のサステナブル・インベストメント・チームはエネルギー移行、生物多様性、現代奴隷制に焦点を当ててリサーチを行う予定です。
  • また新たに、責任あるAI活用をリサーチ・テーマに加え、特にサイバーセキュリティ関連に重点を置いています。

グローバル・サプライチェーンは、政府および投資家にとって引き続き最大の懸念事項であり、2024年には当社のサステナブル・インベストメント・チームが重視する分野の一つとなるでしょう。地政学的な緊張や新型コロナウイルス感染症の影響が長引く中、複雑に絡み合った世界経済の脆弱性と、業界のサプライチェーンのつながりを理解し強化する必要性が浮き彫りになっています。

現在の課題は、政策立案者、投資家、発行体が企業間のつながりを十分に理解しておらず、その結果、サプライチェーンの弱点を特定できていない可能性があることも示唆しています。私たちは、このような相互のつながりに関する透明性を高めることで、リスクと投資機会をより明確に特定できると考えます。また、明確化することにより、企業がサプライチェーンの混乱に伴うコスト発生を未然に防ぎ、炭素や水といった原材料のコストが上昇した場合にサプライヤーへの影響を緩和することができる可能性があります。私たちは、2024年のサステナブル投資における注力分野を通じて、サプライチェーンについて、また、サプライチェーンがどのように潜在的投資に対する追い風または逆風を形成するかについて、理解を深めるよう努めています。

2024年の注力分野 

サステナブル投資の環境は、一連の投資機会の拡大、消費者と投資家の関心の高まり、および政策の移行によって引き続き形成されています。企業は、洞察に富んだサプライチェーン管理を行い、利害関係者に明確な情報を提供することで、コスト削減やリスク軽減の機会および競合他社との差別化を図る機会を得ることができるでしょう。そこで、2024年はグローバル・サプライチェーンとの関係や依存関係が深く複雑な「低炭素エネルギーへの移行」、「生物多様性への依存と影響」、「現代奴隷制」の3つの分野でリサーチを深めていきます。長期的な価値を引き出し、お客様にプラスの投資成果をもたらすという当社の目標を引き続き達成するために、2024年はリサーチとエンゲージメント活動の多くをこれらの分野に集中させる計画です。

エネルギー移行  

ジャネット・イエレン米財務長官は、「炭素集約的な投資からカーボンニュートラルな投資への資本の流れは、おそらく人類史上最も劇的で予測可能な経済的変化である」と強調しています1。私たちは、投資家として詳細な情報に基づく投資判断ができるように、この変化に関する企業の計画を理解する必要があると考えています。欧州の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)やカリフォルニア州の包括的な新法である気候企業データ説明責任法(SB253)および気候関連財務リスク法(SB261)などの規制によって、今後数年間で企業による温室効果ガス排出量の開示はより一貫性があり比較可能なものに変化する可能性が高い一方、投資家によるファンダメンタルズ・リサーチとエンゲージメントは、今日の企業の移行計画に関する洞察につながる可能性があります。 

企業とのミーティングを通じて、低炭素への移行戦略を理解し、サプライチェーンの透明性を促進することによって、同じ業界における企業間の違いをより正確に評価できると考えます。「ある企業のプロセスは競合他社のプロセスと比べて炭素集約度がより高いのか低いのか」「サプライチェーンにおける炭素強度の管理方法は、競争上優位であるか。または、優位性が侵食される可能性があるか」「規制や消費者の選好の変化によって、企業のビジネスの一部が混乱するリスクがあるか」といった疑問の探求により、私たちはお客様により良い投資成果を提供することを目指しています。

生物多様性

世界のGDPの50%超(経済価値で推定44兆米ドル)は、自然および生態系サービスに依存しています2。生物多様性への依存と影響を考慮する企業の姿勢に対して、市場の関心は高まっているようです。

健全な生態系や水、鉱物、林業などの原材料が様々な産業にとって重要であることを考えると、生物多様性へのリスクはサプライチェーンのもう一つの潜在的な懸念事項です。現在、生物多様性に関する施策のほとんどは、投資家が投資プロセスに適用できる実用的な財務指標に転換されていません。いずれにしても、市場参加者は、サプライチェーンに沿って生物多様性に関連するリスクを評価し、価格を決定するのに役立つ、より多くの詳細な情報を必要とし始めると予想されます。

企業にとっては、業務やサプライチェーンのフットプリントにおける生態系へのエクスポージャーについて報告する必要性(およびその能力)を評価しながら、新たな規制および評判に関する考慮事項に対処するために、短期的なリスク管理が重要になるでしょう。中期的には、生物多様性への依存度による投入物価指数の変動やサプライチェーンの再構築の可能性に直面するかもしれません。これらの道筋の可能性を理解することは、企業の準備や投資家の十分な情報に基づいた意思決定に役立つと考えられます。

また関連して、資産運用業界においても、水不足や水の管理への関心が高まることが予想されます。私たちは、世界有数の独立系気候研究機関である「ウッドウェル気候研究センター」と協力して、現在ポートフォリオ企業に割り当てている気候物理リスクおよび移行リスクスコアに類似する「水スコア」の開発について議論を開始しました。豊富で信頼できる水源がなければ、ほとんどの生態系は健全であり続けることができず、私たちの経済が依存する生態系サービスが失われてしまいます。私たちは、自然資本と地球の気候とは密接な関係にあることを踏まえて、自然に基づく解決策がネットゼロ目標と気候レジリエンスを達成するための鍵になると考えています。2024年には、循環経済、資源効率、資源管理に焦点を当て、生物多様性の保全と気候リスクの緩和を推進する革新的な投資機会を模索していく予定です。

現代奴隷制

現代奴隷制は、借金による束縛、人身売買、奴隷、強制労働、詐欺的な採用慣行、児童労働など、様々な形態の悪質な搾取に関連する特定の法的概念を包括する総称です。企業のサプライチェーンにおける現代奴隷制は、財務的損失、規制による強制的な措置、永続的な風評被害をもたらす可能性があることから、この問題は投資家が最も懸念する事項です。すべての企業が現代奴隷制にさらされるリスクに直面していますが、企業は優れた規定、プロセス、慣行を通じてこのリスクを軽減できると私たちは考えています。

私たちの現代奴隷制に関するリサーチおよびエンゲージメントの取り組みでは、アジア太平洋地域およびアジア亜大陸地域に現代奴隷制が広く存在していることを考慮し、新興市場企業を優先しています。入手できるデータは限られていますが、私たちはアクティブ運用者として企業と有意義な対話を実施し、企業の取り組みへの理解を深めることができます。また、これまでも多くの機会で対話を実施してきました。企業との対話は、業界全体のベースラインと現代奴隷制を根絶するためのベストプラクティスについて私たちの理解を深める一助となります。私たちの目的は、企業と協力して、サプライチェーンやビジネスパートナーを包摂する改善された労働・人権管理プログラムを開発し、これらのプログラムについて投資家に透明性を提供することです。こうしたプログラムを整備することは、発行体の様々な財務的リスクの軽減に役立つでしょう。

新たなリサーチ・テーマ 

責任あるAI活用とサイバーセキュリティ:AIの適用範囲の拡大によって、倫理とデータセキュリティに関連する新たな課題が増加しています。AIは、生産性を促進し、イノベーションを加速させる強力で画期的なツールである一方で、経済や国家安全保障の混乱を引き起こすことを目的とした誤った情報を広めるという点でも同様に強力なメカニズムを持っています。企業や政府はサイバー脅威を最小限に抑え、データを保護しながら、AIの力を活用する技術とガバナンスの能力を開発する必要があります。私たちは、AI導入の倫理的配慮を評価するための新たなフレームワークを調査し、開発する予定です。

1 Remarks by Secretary of the Treasury Janet L. Yellen at the Countdown Summit, 2021 United Nations Climate Change Conference (COP26), November 2021.| 2 “Nature Risk Rising: Why the Crisis Engulfing Nature Matters for Business and the Economy,” New Nature Economy series, World Economic Forum, January 2020.

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ウェンディ・クロムウェル

サステナブル・インベストメント・ヘッド