the pivotal role of stewardship in creating lasting value

長期的な企業価値創造に向けた、スチュワードシップ責任の重要性

2023-10-24
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スチュワードシップ責任は、企業の長期的な財務およびサステナビリティ(持続可能性)の価値向上の鍵を握っています。ウエリントンのスチュワードシップ責任を重視した運用戦略は、人および地球環境への配慮と企業利益の向上を両立し、長期的な競争優位性を築いている企業に厳選投資。株式市場を上回る投資収益を目指しています。すなわち優れたスチュワードシップ責任を果たしている真のリーダー「グッド・スチュワード企業」を発掘し、それら企業の成長を支援しています。

そうしたグッド・スチュワード企業は主に次に努めています。

  • 従業員、サプライヤー、顧客、地域社会など、「人」に投資することで、従業員離職率の抑制、顧客ロイヤルティーの向上、企業文化の強化と多様性の改善を促しています。
  •  環境負荷を低減し、限りある資源を有効利用するための措置を取り、気候変動対策に積極的に取り組むことで、地球環境への配慮とレジリエンス(耐性・回復力)を強化しています。
  •  規律ある資本配分により、現在の株主還元と将来に向けたイノベーション、事業、人材への投資のバランスを取ることで、利益拡大を図っています。

たとえスチュワードシップ責任の優れた企業であっても、私たちは長期の視点に立ち、企業との対話を通じてさらなる改善を働きかけていきます。特にリスクが高いとみられる分野で事業を展開している企業へのエンゲージメントは徹底したエンゲージメントを繰り返し、進捗を促していきます。

企業エンゲージメントの事例

事例① 責任あるサプライチェーンと調達

フランスの大手タイヤメーカーのミシュランは、収益性とサステナビリティの両立に重点を置いている、スチュワードシップ責任のリーダー企業です。競争の激しい業界のトップ企業である同社は、耐久性への関心の高まりや電気自動車の台頭から恩恵を享受できると見込まれます。また、同社の堅実な事業遂行と財務状況、効率化に向けた取り組みは高く評価できます。ウエリントンのスチュワードシップ責任を重視したポートフォリオの中でも、同社は原材料の調達に関してトップクラスの「トレーサビリティ(生産・流通履歴の追跡)」を維持しているとみられます。

サプライチェーン(供給網)を監視するには、企業は、ティア1(直接契約を締結している取り引き先)のさらに先にある調達先も追跡する必要があります。取り引き先がその先の調達企業まで監視する役割を担っていると考えてしまいがちですが、一般的にティア1の先の監視システムは脆弱になる傾向にあります。例えば、現代奴隷制はサプライチェーンの末端で最も発生しやすくなります。サプライチェーンの末端まで監視・追跡が行き届いている企業は、調達先の人権問題を未然に防ぐことができます。

責任ある調達は、サプライチェーンのリスクを低減します。私たちは投資先企業とのエンゲージメントを通じて、サプライチェーンのリスク対策を呼びかけています。タイヤメーカーにとって天然ゴムの調達は、通常最も高いリスクの一つにつながっています。同社はゴム栽培が地域の生物多様性や生態系に及ぼす影響を抑制するために、年間約10万戸の農家への研修を実施するなど、森林破壊を減らすために積極的に取り組んでいます。また、複雑なゴム製造のバリューチェーンを追跡するためにモバイルアプリを使用し、ステークホルダー(利害関係者)の情報を収集。これまでに42,000戸以上の天然ゴム農家から労働環境や児童労働などに関する情報を集め、サプライチェーンの実態把握に努めています。同社は、今年中に天然ゴム生産量の80%の労働環境の把握を目指しています。この見える化でリスクを防ぐ対策は、ミシュランがレジリエンスを強化していく上で、重要な役割を果しています。

事例② 地球環境保全の取り組み

米国の家庭用品・消費財メーカー大手のコルゲートは、高い資本収益率と米国以外での堅調な成長を維持していると共に、スチュワードシップ責任に取り組む模範的な企業です。ただし、その成功による慢心が懸念されます。同社はイノベーション、再投資、選択的な買収を入念に計画を練り執行しています。また、経営者の在職期間は長いものの、外部の視点も積極的に取り入れています。

環境保全に関する同社の取り組みも高く評価できます。コルゲートは2020年半ばに科学的根拠に基づく温暖化ガス排出量削減目標を定め、スコープ1およびスコープ2の排出量を2030年までに(2018年の基準から)50%削減し、スコープ3にも積極的に取り組むことを掲げています。2018年から2025年までに取り引き先の排出量を30%以上削減することを目指し、交渉にも要件を盛り込んでいます。また、監査やモニタリング方法を改善しつつ、取り引き先にも排出量の測定、外部機関による検証と開示を働きかけています。このほかに、持続可能なパーム油に向けた取り組みを強化するために、他の消費財メーカー大手と緊密に連携してデータを共有するなど、業界全体の活動にも注力しています。さらに、消費者嗜好の変化に対応し、製品やパッケージの大幅な刷新などにも、力を入れています。私たちは引き続き、同社に情報開示、取締役会や経営陣への柔軟なアクセス、変化のスピードなどの改善を働きかけていきます。

※上記は参考のために記載した例であり、個別銘柄を推奨するものではなく、今後も当該銘柄の保有を保証するものではありません。上記は過去の実績および将来の予想であり、将来の運用成果および当該銘柄の投資成果等を示唆あるいは保証するものではありません。本資料のコメントは作成時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。

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ヨランダ・コーティンス

株式ポートフォリオ・マネジャー
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アレックス・デイビス

インベストメント・スペシャリスト