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ESGリサーチ・アップデート:

スチュワードシップ活動の優先事項に関する進捗

2022-12-31
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ウエリントンは2021年第1四半期、スチュワードシップ活動の優先事項として、「多様性(D:ダイバーシティ)、公平性(E:エクイティ)、包摂性(I:インクルージョン)(DEI)」と「気候変動」を掲げました。これらの課題は長期的な運用成果に影響を与えると考えられ、私たちは議決権行使に関する意思決定と企業とのエンゲージメントの両面から、企業に改善を促すよう働きかけています。ウエリントンはS&P500指数を構成するすべての企業に対して、書面で議決権行使の基準の改定を伝えました。私たちは引き続き、これらの課題に取り組んでいきます。

ウエリントンは取締役会の人種・民族構成に関して情報を開示しなかった28社に対して、指名委員会およびガバナンス委員会の議長再選に反対票を投じました。 取締役会の多様性は、企業がより戦略的な決定を下すために重要です。それらの企業に対して、改善を要請するために反対票を投じたのはウエリントンだけではありません。2021年の株主総会シーズンでの取締役の再選率は85%となり、従来の95%を下回りしました。ウエリントンでは2022年にS&P500指数を構成する企業に対して同じような対応を行い、今後さらに対象を拡大していく方針です。

ウエリントンでは、気候変動についても議決権行使および企業エンゲージメントの重要課題の一つに位置付けています。気候変動は、経済および金融市場の長期的に重大な財務リスクであり、顧客のポートフォリオに影響を及ぼすと考えられます。私たちは2021年に、パリ協定に準拠し気候リスクの情報開示を改善するよう求める株主提案をいくつか支持しました。ウエリントンは通常、企業の政治献金やロビー活動を取締役会が監督することを要請する提案や、特に気候変動対策に関する報告と経営戦略の間に重大な不一致がある場合などの情報開示の改善を求める提案に対して支持しています。ロビー活動に関する株主提案を評価する際には、既存の情報開示の透明性も重視しています。

2021年の株主総会シーズンの新たなトレンドとしては、企業の気候変動対策の取り組みや戦略方針などについて、株主の意思「セイ・オン・クライメート(Say on Climate)」を総会で確認する議案が増えたことが挙げられます。それらの提案を評価する一般的な基準がないため内容の質にばらつきがありますが、私たちは顧客のポートフォリオに含まれる企業に関する知見や脱炭素化に向けた移行リスクの調査を活用し、それぞれの計画の有効性を評価しました。

また、ウエリントンは、規制当局に気候変動対策を支持していくことを提唱しました。その一例として、米国証券取引委員会には、発行体の所在地情報や温室効果ガス排出量、その他の重要なデータおよび指標を含む重大な気候変動リスクの開示の義務化を支持すると伝えました。

2021年第3四半期の企業エンゲージメントの事例

アメリカン・タワー
業種:不動産

概要

ESGリサーチ・チーム(以下、当チーム)は、アメリカン・タワー社(以下、同社)が温室効果ガス排出量の削減目標について、どのように考えているのか理解を深めるためにエンゲージメントを行いました。また、同社の新興国における社会的コベネフィット(発展途上国における持続可能な経済・社会の発展に向けた支援)の取り組みについても議論しました。

対話のポイント
脱炭素への移行に関する取り組み

ウエリントンは、「ネットゼロ・アセットマネジャーズ・イニシアチブ」の設立メンバーの一員として賛同表明しています。当チームでは、投資対象企業の中でも炭素集約型の企業が、科学的根拠に基づく温室効果ガス排出量削減目標(SBT)をどのように策定し削減をめざしていくのか理解を深めるため、対話を重ねています。同社は、当初10年間の目標としてアフリカとアジアでの温室効果ガス排出量を60%削減することを掲げています。この取り組みについては著しい進展がありましたが、SBTの策定は難航しています。アフリカやアジアは、脆弱な送電網やディーゼル燃料への依存といった課題を抱えています。しかし、これらの地域での事業による排出量が同社全体の90%以上を占めているため、改善が期待されます。当チームでは、同社が他の地域に対するSBTの策定を加速させていることについて、前向きに評価しています。これまで以上に同業他社、顧客、投資家の温室効果ガス排出量および気候変動の緩和策に対する関心は高まっています。

地域社会との関わり

同社は太陽光発電やバックアップ用エネルギー貯蔵源などを含め、新興国地域におけるエネルギー効率化プロジェクトに大規模な設備投資を行い、社会に貢献しています。こうした取り組みは、同地域における雇用の創出やオンライン教育の拡大につながっています。当チームでは、同社が地域社会、政府、戦略的パートナーと効果的に協働することで、同様プロジェクトの展開を促進し、社会へのプラス効果を高めていくと考えています。

まとめ/フォローアップ

当チームのフィードバックを踏まえ、同社はSBTの策定と脱炭素への移行に関する取り組みの重要性を認識し、戦略的優先事項とする考えです。当チームでは今後一定期間、同社のカーボンフットプリント削減の進捗状況をモニターし、SBTの策定を可能な限り早期に実施するよう引き続き働きかけていきます。同社にとってこれらの取り組みは改善に向けた姿勢とグローバルな顧客および投資家を維持していく上で役立つと考えられます。

2021年第3四半期の議決権行使の結果

企業の経営陣と対話する強力な手段の一つとして、議決権行使を活用することができます。私たちESGリサーチ・チームは、各議案を調査した上で、株主の権利を損なうと考えられる場合、または現在あるいは将来の投資対象企業の株価に悪影響を与えると予想される議案には反対票を投じます。下記は当期、ウエリントン・マネージメント全体で議決権を行使した議案の内訳です。

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出所:ウエリントン・マネージメント。※四捨五入により合計が100 にならない場合があります。

2021年第3四半期のESGエンゲージメント

2021年第3四半期にESGリサーチ・チームは、ESG関連のテーマについてポートフォリオで保有する14カ国86社の企業とエンゲージメントを実施しました。

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出所:ウエリントン・マネージメント。※四捨五入により合計が100 にならない場合があります。

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E=環境、S=社会、G=企業統治に関する話し合い。上掲のリストにはウエリントン・マネージメントのESGリサーチ・チームが当期間に行ったエンゲージメント・ミーティングがすべて記載されています。記載されている企業は、お客様のために購入、売却もしくは推奨する有価証券の全てを網羅しているわけではありません。記載された企業への投資が利益を生んだ、または生むであろうと想定すべきではありません。お客様ごとに実際のポートフォリオで保有される銘柄は異なり、特定のお客様の口座が記載された企業のいずれかまたは全てを保有する保証はありません。当資料は投資助言の提供、売却の提案、もしくは株式その他の証券の申し込みの勧誘を目的とするものではありません。


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ESGリサーチ・チーム