クライメート・レポート2022

ウエリントン（以下、当社）が気候変動を注視し続けているのは、経済の脱炭素化や気候変動の物理的リスクに対するレジリエンス（耐性・回復力）構築のコストが資産価格に影響を及ぼし、ひいてはお客様の投資ポートフォリオに重大なインパクトを与えると確信しているためです。同時に、エネルギー転換と気候変動への適応策に関連する投資機会は、上場および未上場市場の様々な資産クラスで拡大しています。

本レポートでは、気候関連財務情報開示タスクフォース（TCFD）の提言に従い、気候リサーチとエンゲージメント活動、ガバナンスとリスク監視、気候変動に焦点を当てた運用戦略（未上場市場を含むオルタナティブ投資にも拡大）や、業界をリードすると考える当社のアプローチの最新情報をお伝えします。

2022年には、世界有数の独立系科学研究機関「ウッドウェル気候研究センター」（以下、ウッドウェル）との協力関係を深め、生物多様性をリサーチ・テーマに加えました。また、気候変動の移行リスクに関する研究を進めるために、米国マサチューセッツ工科大学（以下、MIT）「地球規模の変化に対する科学と政策のジョイントプログラム（Joint Program on the Science and Policy of Global Change）」との共同調査を開始しました。政策当局や市場参加者が生物多様性の損失による人的・経済的損害を認識し始めるのに伴い、気候変動の物理的リスクと移行リスクに関する調査と同様、市場は生物多様性関連の情報を証券分析によって重要と積極的に活用し始める可能性があります。

当社は、生物多様性損失関連の潜在的な投資リスクを理解するための調査主導のアプローチをさらに発展させたいと考えます。そのため、Ceres（Coalition for Environmentally Responsible Economies：環境に責任を持つ経済のための連合）の土地利用と気候に関するワーキンググループ、自然関連財務情報開示タスクフォース（TNFD）フォーラム、畜産関連のFAIRR（Farm Animal Investment Return and Risk）イニシアチブ、生物多様性会計金融パートナーシップ（PBAF）など、生物多様性にフォーカスしたいくつかの業界団体に参加しました。

その他の活動としては、グローバル・レジリエンス・パートナーシップのメンバーと協力して調査報告書を執筆し、気候変動に対するレジリエンス構築を目指す企業を支援するための枠組みを提示しました。また、「Coalition Greenwich」と連携してアセットオーナーを対象とした調査を実施し、クライメート投資に対するアセットオーナーの知識レベルや姿勢への理解を深めました。

当社は 2022年、世界の大手アセットオーナーであるお客様が気候変動と金融市場に関する見解やアイデアを共有できるよう、ウエリントン気候リーダーシップ連合（WCLC）を正式に発足させました。また、当社のサステナブル・インベストメント・ヘッドのウェンディ・クロムウェルは気候関連金融リスクアドバイザリー委員会に加わり、イエレン米財務長官が議長を務める金融安定監督評議会（FSOC）に参加しました。

当社は「グローバル・リアルエステート・エンゲージメント・ネットワーク（GREEN）」にも加盟しました。GREENは不動産業界に対して、炭素排出量を削減し、気温上昇を 1.5℃に抑える科学的根拠に基づく目標への進捗を管理することで、気候変動による金融リスクと非金融リスクを低減するように働きかけています。これらの活動は長期的な価値創造につながるでしょう。

さらに当社は 2022年、発行体の気候変動の移行リスクと投資機会を分析する独自の移行アライメント格付け（TAR）を開発しました。この格付けは、エネルギー転換に取り組む発行体の戦略を評価するのに役立ちます。加えて当社は、「ネットゼロ・アセットマネジャーズイニシアチブ（Net Zero Asset Managers Initiative（NZAMI））」への参加も継続しています。同イニシアチブには 2022年 12月 31 日時点で世界の 301企業・団体が署名し、運用資産総額は 59兆米ドルに上ります。エネルギー転換は大きな経済テーマであり、資本市場や当社がお客様に代わって投資する証券に影響を及ぼすと考えます。当社は財務実績とリスク管理に重点を置き、お客様がこうした変化を乗り切ることをサポートするとともに、気候変動問題への取り組みを通じて卓越した運用成果を実現できるよう引き続き努めます。