2024年CEO年頭挨拶

混乱と変化のなかで経験則を見直すべき岐路

2025-01-10
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大きな地政学的混乱に見舞われ、人々が苦しむ現状の中、2024年に明るい日々が訪れることを心から祈っております。世界で生じた出来事は、私たちが関わっているお客様や企業、国に広く影響を及ぼしており、皆様がこの不安定な局面を乗り越えられるよう願っております。楽観的な見方を付け加えるならば、私たちは比類なきイノベーションの時代に生きており、人間の知恵が今後の課題の克服に資すると信じております。30年以上にわたりヘルスケア・セクターへの投資に携わってきた経験上、私は決意や大志、目的がいかに多大な変化をもたらすかを間近に見ており、そのため、未来に対して強い確信を抱いています。

ウエリントンでは、お客様が変動の激しい市場および経済環境を切り抜けるなかで、お客様に安定と安心を与え、お客様から信頼されるパートナーとなるよう努めています。新年のご挨拶にあたり、そうした世界金融危機後の時代から劇的に変化した環境を視野に入れつつ、私たちがいかにお客様のニーズに応えるべく注力しているかについて、ウエリントンの考えをいくつかご報告いたします。

一変した投資環境

2023年の金融市場は、株式と債券がともに低迷した2022年の歴史的に厳しい結果から、確かに立ち直りました。同時に、経済と市場の動向に関する投資の「経験則」に疑問の余地がある環境下に置かれているようです。多くの人々が予想した景気後退には、少なくともまだ陥っていません。市場が「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる米国主要テクノロジー企業7社に極端に集中する今の時代は、予想を裏切り続けました。また、人工知能(AI)の進化は、急速に多くの人々の世界経済見通しを根底から変化させ、幅広い産業に混乱をもたらし始めました。

一方、2023年はレジームの変化がより明らかとなり、ウエリントンのマクロチームは引き続き、「イージーマネー」時代の終焉とグローバル化の巻き戻しを背景に、景気サイクルの短期化と頻度の高まり、インフレとそのボラティリティの構造的な上昇、各国の政策決定とその経済効果の格差拡大が懸念されると主張しています。その結果、金利や市場の見通しを含む経済見通しの不確実性が引き続き2024年の主要テーマとなり、多くのアセットオーナーの資本投下およびポートフォリオのポジショニングに関する決定を裏付けると予想しています。

多大な変化を背景に、アセットオーナーは、確固たる哲学とプロセスに依拠すると同時に、厳しい質問を投げかけ、異なる視点に耳を傾け、必要に応じて自己の前提条件を見直すことを恐れないポートフォリオ・マネジャーを採用するべきと考えます。アセットオーナーはまた、ポートフォリオ・マネジャーが経済や産業の状況変化に対し、そうした複雑な世界で必要とされる広範かつ綿密なリサーチで備えることを期待するべきでしょう。 

お客様のリスク管理と投資機会の追求に尽力

このような時代にこそ、ウエリントンの協働を重んじる文化が真価を発揮し、運用プロフェッショナルが、債券やプライベート・エクイティ、新興国株式、多くの専門的なテーマ戦略などの分野で現在行っているように、各自のアイデアを検証し、お客様のために投資機会を特定することに寄与すると考えます。ウエリントンのチームは、重要な地政学的リスク、金利の見通し、人工知能の経済的影響、エネルギー移行、中国の見通しなど、 市場や経済政策、ポートフォリオに関する投資判断を左右する様々なトピックスに関して、活発な議論や討議を重ねています。

このような環境下、ウエリントンの運用プロフェッショナルは、アクティブ運用に大いなる可能性があると見ています。私たちは、勝ち組を負け組から区別し、強靭なファンダメンタルズを有する株式や債券の発行体とバランスシートや見通しに問題のある発行体を見極めることを中心に据えており、すべての主要資産クラスにわたる綿密なリサーチへのウエリントンの多大な投資がそれを可能にしています。

資産運用業界にはスケールメリットがあると考えており、世界最大規模を誇るアクティブ運用会社として、プライベート・エクイティやプライベート・クレジット、マーケット・ニュートラル・ロングショート戦略などの分野においても、引き続きお客様により良いサービスを提供することに加え、資産やテーマ、ファクター全般にわたり投資ソリューションの運用に寄与する人材を拡充しています。さらに、運用者育成を含め、運用者をサポートする機能の構築にも取り組んでおり、データや証拠に基づく分析およびコンテンツを活用して、ウエリントンのプラットフォームの全レベルで能力開発を推進しています。

また、急速な技術の進歩を踏まえ、私たちは2023年、新規や新興のテクノロジーに焦点を当て、お客様の価値創造につながるためにテクノロジーをどう活用するのが最善かを検討するための社内ネットワークを構築しました。私たちは、以前からAI技術を活用して、自然言語処理を適用して決算報告書や求人等々におけるパターンを発見するなど、運用プロセスを強化してきました。今や生成AIは、私たちのこれまでの取り組みを補完および推進することに役立つばかりでなく、ポートフォリオのリスク分析やトレーディングなど広範囲にわたる業務効率の向上においても有望です。

私たちは引き続き、サステナビリティに関するリスクや機会が発行体に与える財務的影響を理解することが、アクティブ運用の未来に不可欠であると考えています。同時に、私たちの業界は複雑な世界の規制環境に直面していますが、運用主導のアプローチにより、私たちはこの環境を切り抜ける優位な立場にあると考えます。

多様な人材、すべての社員が各自の能力を最大限発揮できる公平な機会、包摂的な企業文化は、お客様のために卓越したサービスを提供するために必要な人材を惹きつけ、維持するために不可欠と考えます。他の資産運用会社と同様、私たちは、能力の構築と向上に取り組むとともに、アウトプットと成果を定性的・定量的に計測するよう努めています。

お客様を常に第一に考える

ウエリントンの創設者は、創業以来、お客様を第一に考えるという明確で揺るぎない姿勢を貫いてきました。そして「Client, Firm, Self (お客様の利益は会社、自己の利益に優先する)」という企業理念は、現在も私たちのすべての意思決定の指針となっています。お客様の良きパートナーであり続けるため、私たちの優れた点や改善点について、お客様にフィードバックやご指摘をお願いしています。ご承知のとおり、ウエリントンは2023年に顧客アンケートを実施いたしました。ご回答いただいた皆様に御礼申し上げます。そして、ウエリントンおよびスタッフに対する信頼を表明していただいたことに、深く感謝しております。特に市場のストレス局面や組織変更が生じた局面で、より早く意見が聞きたい、レポーティングやデジタル体験を継続的に向上してほしいといった要望など、多くの示唆をいただいたことも励みとなりました。私たちは常にフィードバックを求めており、お客様からの指摘事項に積極的に取り組んでまいります。

また、2023年には、より多くのお客様との再会に心を躍らせました。オンライン会議にも多くのメリットがあるため、対面での会議は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック前の水準には戻っていませんが、世界中のお客様と対面でお会いできたことは非常に嬉しく、感謝申し上げます。2023年は出張の機会が確実に増え、お客様はマクロ見通しに加え、ウエリントンが異なるアイデアを持つ分野についての対話に関心を示されました。2024年には、こうした有益な対話が増えることを期待しております。

新年を迎えるにあたり、資産運用業界は人材が要であり、お客様の受託者として働く社員には全幅の信頼を置いていることを、お伝えしたいと存じます。3,000名を超す社員がウエリントンの企業文化を体現し、運用および顧客サービスを強化しています。

最後になりましたが、日頃よりウエリントンに格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。
皆様のご健勝とご多幸を祈念し、年頭の挨拶とさせていただきます。

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ジーン・ハインズ
ウエリントン・マネージメント
最高経営責任者(CEO)

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ジーン・ハインズ

最高経営責任者(CEO)