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駱 正彦(ろう まさひこ)
- インベストメント・ディレクター
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世界(除く日本)のインフレ率が当面、有意に低下する兆候が限られる中、円が心理的な節目の1米ドル = 150円という過去30年以上ぶりの低水準を記録し、10年国債金利がYCC(イールドカーブ・コントロール)政策の上限とされている0.25%を上回るなど、日本はいくつかの転換点に達したという見方が広がっています。その背後には、財務省の円買い介入が持続的な円安を一時的にしか抑えらず、今や日銀が過度な円安を阻止するためには超緩和的な姿勢からの政策変更が避けられないと、多くの海外投資家が見ているというメッセージが隠されています。
本邦投資家の見方* | 海外投資家の見方* | |
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米国のリセッション入りのタイミング | 2023年4 – 6月期、FRBの「景気抑制的」な水準までの利上げに起因 | 逼迫した労働市場に支えられて、2023年10-12月期まで段階的な景気減速 |
米FRBのターミナル・レート(金利の最終到達時点) | 4.75% – 5.00% | 5.25% – 5.50% |
米ドル/円 | 財務省は1米ドル = 150円台を死守、円は日銀の政策微調整を受けて130円まで回復 | 日銀が動かず米国のターミナル・レートが5%以上となり、円安が(構造的に)「定着」するならば160円も視野に |
日本のインフレ率 | インフレ圧力は「一過性」で、インフレ率は3%程度に抑えられ、2023年4-6月期にピークに達する | インフレは、(当初は「一時的」と断じられた)欧米と同様に構造的な上昇圧力がかかる可能性 |
日銀の政策 | 黒田総裁の退任後に段階的かつ秩序ある政策調整 | 10年に及ぶイールドカーブ・コントロール政策は2023年4月(黒田総裁の任期満了)まで続かない可能性がある |
*出所:ブルームバーグのエコノミスト・サーベイに基づきウエリントン・マネージメント作成。※上記はあくまで一例にすぎません。上記は過去の実績および将来の予測であり、将来の市場環境等を示唆・保証するものではありません。
特筆すべきことに、本邦投資家は、インフレ圧力は「一過性」で、日銀が政策を調整する差し迫った必要性はないという黒田日銀総裁の見方と概ね一致しており、海外投資家とは明確に異なる意見を持っているようです(上図)。
労働市場が底堅さを維持している米国と比較検討するならば、米連邦準備理事会(FRB)は、労働力の供給が増加せず、生産性が向上していないことから、予想潜在成長率を再考しています(すなわち、以前の考えより大幅に引き下げ)。現在の米国経済は、FRBの以前の想定より潜在成長率をさらに上回っていると見受けられ、インフレ率を2%の目標水準まで持続的に低下させるには、一層の金融引き締めが必要になると思われます。この点に関して、FRBは今後の利上げペースを鈍化させると示唆しているものの、「タカ派姿勢の長期化」を意図し、フェデラル・ファンド金利のターミナル・レート(政策金利の最終到達地点)の引き上げを予想しているようです。
その結果、日銀に金融政策の少なくとも「微調整」を比較的速やかに行うように求める圧力は、引き続き強まると考えています。そうした政策変更がなければ、今後も円安が続く可能性が高いでしょう。現時点の市場コンセンサスは、エネルギー価格への規制強化と補助金および食料品の輸入統制を実施することが、日本のインフレ率を他国より低く抑えることに役立つというものです。しかし、円安が長期化すれば、日本のインフレ率は、輸入インフレ(コモディティの輸入価格上昇によるインフレ率の押し上げ)を主な要因として、今より高水準で高止まりする可能性があります。
駱 正彦(ろう まさひこ)
ジトゥ・ナイドゥ