2023年市場展望

クレジット市場:所により晴れ、一部割安な投資機会

2023-11-30
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下記コメントは2022年11月(米国時間)時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。

グローバル債券市場にとって、2022年は極めて厳しい年でした。歴史的に負の相関を示す株式と債券の関係性が今年は機能せず、分散投資であっても逃避先を見つけられませんでした。実際、クレジット市場の多くの分野で年初来パフォーマンスが低迷しています。米連邦準備理事会(FRB)など世界の中央銀行が根強いインフレを抑制すべく積極的な金融引き締め策に乗り出し、結果として、国債利回りは大幅に上昇し、クレジット・スプレッドも拡大しました。

一方、良いニュースとしては、今年の経済と市場の動揺によってほとんどの債券セクターのトータルリターンはマイナスとなりましたが、幅広い売りと継続的な高ボラティリティによって、投資ホライズン(想定投資期間)を長期に設定する賢明な投資家にとって魅力的な投資機会が一部に出現していることです。 

クレジット市場の混乱とボラティリティの活用

確固とした投資プロセスを持つマルチセクター・クレジット運用など、高い利回りとインカムを求める戦略は今後の金利とクレジット・スプレッドの変動に対して強力なバッファー(緩衝材)の役割を果たす可能性があります。特に、今後発生するであろうクレジット市場の混乱を活用し、リスクを管理しながら、利回りとトータルリターンの向上を追求する戦略への投資は検討に値すると考えます。そのような投資機会をより有効に活用したいのであれば、2023年に向けてリスクに対してディフェンシブな姿勢を取り、ポートフォリオのキャッシュと流動性の高い資産の比率を引き上げておくべきでしょう。

高利回りクレジット・セクターに投資機会

リセッション・リスクが浮上し、かつ、高まっていますが、高利回りのクレジット・セクターの幾つかに投資機会が認められます。 

私たちが算出している景気先行指標は概して、世界経済が2023年にリセッション入りする可能性が高いことを示しています。しかし、サービス・インフレがより対処可能な水準にまで下落するのに、緩やかなリセッションで十分なのか、それとも、より深刻な景気の落ち込みが必要なのかはまだ明らかではありません。いずれにしても、今年の不確実性とボラティリティの上昇は、様々なクレジット・セクターの異なる程度とタイミングでの下落につながりました。結果として、グローバル債券セクター間でのローテーション(物色対象の転換)の機会とリスク・リターン特性が魅力的な分野へクレジット・エクスポージャーを移行させる機会が生じました。その傾向が特に顕著なのが以下の分野です。

  • 欧州の偶発転換社債(CoCo債)のスプレッドは最近大幅に拡大し、将来のデフォルト率について、私が予想するよりもはるかに高い水準を織り込んでいます。ロシアとウクライナの紛争の継続により、世界的なエネルギー不足への懸念が高まりましたが、それは、欧州の一部の国の政府にとっては、財政刺激策による経済支援と自国の銀行の支払い能力の確保に乗り出す「隠れ蓑」になりました。 
  • 信用リスク移転(CRT)証券は、住宅ローン・プールを裏付けとしますが、住宅価格が今後下落するとの懸念により、売り圧力に押されました。しかし、経年プールの原資産である住宅の多くで価格が大幅に上昇しており、それは今後の下落の緩衝材になるとみられます。加えて、信用補完によって、低格付けのCRTトランシェであっても、デフォルト損失の可能性は非常に低いと考えます。
  • ハイイールド債のデリバティブは、現在、発行体が同一の現物債よりも広く取引されており、これはリセッション時でなければ通常見られない現象です。また、これらの金融商品は、クレジットエクスポージャーを保有する手段の中で最も流動性が高く、比較的低い取引コストでポートフォリオのリスク特性を迅速に調整することを可能にします。
  • 新興国社債は世界的な金融引き締めから大きな影響を受けています。とは言うものの、格差が顕著である資産クラスでもあるため、国または銘柄を個別に十分に分析することによって、相対的に割安な市場と発行体を見極めることができると考えます。新興国社債のファンダメンタルズは概して、石油・ガス、通信、公益、インフラのセクターを中心に、良好な状態を維持しています。

結論:2023年には、相対価値の高い投資機会が数多く出現すると予想します。賢明な投資判断を行えば、スプレッドが拡大したタイミングでクレジット・リスクを追加することができるでしょう。

図表
債券セクターのバリュエーション:超過リターンの予想

出所:ブルームバーグ、バンクオブアメリカ・メリルリンチ、モーニングスター/LSTA、JPモルガンのデータに基づき、ウエリントン・マネージメント作成。時点:2022年9月30日。予想超過リターンはデュレーション調整ベースの米国債対比で、過去のリターンとボラティリティの特徴の分析に基づき、シミュレーションによって算出した、将来の超過リターンとボラティリティの予想値。上図は、他のファンダメンタルズ・データおよびテクニカル・データを考え合わせたうえで、どの債券セクターがその時点で割安と判断できるかを表示したもの。※上記の結果はウエリントン・マネージメントの独自の見方に基づくもので、必ずしも客観的な市場データに基づくものではありません。表示の情報が正しい判断であることを保証するものではなく、いずれかのポートフォリオ、市場、または、資産クラスのリターンの予測や保証を意図したものでもありません。上記の予想は仮説に基づき、説明をのみ目的に表示され、実際の投資の結果を示すものではありません。上記は過去の実績および将来の予測であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。

平均をわずかに下回るリスク特性と平均以上の流動性を維持

悪化するマクロ経済環境と流動性不足の状況は社債の見通しを曇らせますが、相対的に割安なバリュエーション、依然として良好なファンダメンタルズ、過去のクレジットサイクルとは異なり不均衡が認められないことを考慮すると、弱気の見方は幾分か和らぎます。 

歴史的にクレジット市場のリターンを的確に予測してきた金融政策指標は最近大きく悪化しています。さらに、現在のクレジット・スプレッドは多くの債券セクターで過去の中央値を上回る水準に拡大し、近い将来の世界経済の減速を既に反映しているとみられます。より明るい面に目を向ければ、企業のバランスシートは全般的に極めて健全で、市場の中でも脆弱なクレジットはコロナ禍の初期段階で既にデフォルトしています。 

繰り返しになりますが、出来得る限り効率的に、かつ、リスクを意識しながら、利回りとトータルリターンの追求を目標に、高利回りクレジット市場の様々な混乱から生じる投資機会を活用してポートフォリオを構築すれば、パフォーマンスの向上に役立つと考えます。また、市場環境が不確実な中、ポートフォリオの資産配分については、柔軟かつ機動的である必要があります。特に、市場に生じた投資機会を逃さないように、キャッシュと流動性の高い先進国の国債に資金を厚めに配分しておくことが重要でしょう。

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ロバート・バーン

債券ポートフォリオ・マネジャー