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上場市場の調整が未上場レイトステージ株式に与える影響

2023-05-31
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時代が変わりつつあります。過熱化していた上場グロース株のバリュエーションが過去4カ月間で大幅に低下しました。現在、未上場レイトステージ株式はこの変化を織り込む過程にあります。最終的に未上場市場のバリュエーションも低下するかもしれませんが、テクノロジー主導型の創造的破壊が経済のあらゆる所で機会を生み出す状況や成長企業が未上場市場に従来よりも長く留まる傾向に変化はないでしょう。

バリュエーション環境の変化

ここ数年間で膨張したバリュエーションが多くの分野でようやく調整されようとしています。例えば、上場市場におけるサービスとしてのソフトウエア(SaaS:サービスとしてのソフトウエア)セクターの株価売上高倍率(時価総額÷年間売上高)は今や2019年の水準に戻りました(図表1)。

図表1
SaaSの株価売上高倍率(倍)

出所:ファクトセットに基づきウエリントン・マネージメント作成。2022年5月9日時点。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。

この上場市場の調整は未上場レイトステージ株式にどのような影響を与えるのでしょうか。バリュエーションが最も高かった分野の銘柄の一部は評価額の大幅低下に見舞われました。例えば、有力なSaaS企業の中には、バリュエーションが数カ月前とは全く異なる企業もあります。

上場企業の調整はレイトステージ企業の資金調達にも影響を及ぼしています。資金調達活動は依然として過去最高水準にあるものの、徐々に下降線を辿っています。2022年1-3月期のベンチャー・キャピタル業界のデータによれば、資金調達総額は前四半期比で19%減少しました。1億米ドル以上の規模の資金調達件数は2021年11月に最高潮に達した後に月を追うごとに減少しています(図表2)。

しかし、このようなデータと実態との間にはタイムラグが生じることに注意が必要です。企業がタームシートに署名してから最終的に資金を獲得し、資金調達を行った事実を発表するまでには往々にして1カ月以上かかります。従って、2022年1-3月期に発表されたレイトステージ企業の資金調達案件の多くは実際には2021年末に締結されたとみられます。これを踏まえると、2022年4-6月期の資金調達件数は1-3月期のそれを下回る可能性があります。とは言うものの、資金調達活動が依然として活発であることは明らかです。ただ2021年までのブームが去ったのは確かです。

図表2
1億米ドル以上規模の資金調達(月間件数)

出所:ピッチブック。 2022年3月31日時点。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。

現在の未上場市場の状況

バリュエーションの水準が低下し、資金調達活動が減速する中、この新たな環境に応じて投資家の行動も変化しています。多くが近年のブームに乗って高バリュエーションの時期に未上場市場に参入したことを後悔し、この市場からの撤退を検討している可能性があります。 

これは、全般的な環境が正常化に向かい、未上場市場の価格が下落するものの、規律ある運用戦略であれば、市場参加者が減る中で、魅力的な投資機会を以前よりも割安なバリュエーションで捉えられることを意味します。


主要リスク

すべての投資は投資元本を割り込むリスクを伴います。以下は、様々な資産クラスに関する一般的なリスクであり、必ずしもすべてのリスクを網羅しているものではありません。特定の投資アプローチや商品は固有リスクがあり、リスクは変化します。

オルタナティブ・リスク:オルタナティブ投資はレバレッジを利用し、潜在的な損失額が大きくなることがあります。さらに、非流動性の増加、ボラティリティ及びカウンターパーティー・リスクを伴います。

資産担保/モーゲージ担保証券リスク:モーゲージ関連証券及び資産担保証券への投資は期限前償還リスクを伴います。このリスクは、当該証券を裏付けるローンの元金について、購入時の想定とは異なる繰上返済が行われる可能性を指します。これにより、モーゲージ関連証券及び資産担保証券のデュレーションの予測が困難になることがあります。

投資適格未満債券リスク:低格付債は、利払い及び/又は元本返済の不履行の可能性が投資適格債のそれよりも大幅に高くなるリスクを有します。通常、低格付け債の流通市場の流動性は投資適格債のそれよりも著しく低く、価格変動が非常に激しく、呼び値スプレッドが大きくなる傾向にあります。

資本リスク: 投資市場は、経済、規制、市場センチメント、政治リスクを伴います。投資を決定する前に自らの投資資金に影響を与え得るリスクを検討する必要があります。投資元本の価値は、投資時から増加することもあれば、減少することもあります。

コモディティ・リスク:コモディティ市場は伝統的な株式又は債券の市場よりも変動幅が大きくなることがあります。コモディティ連動デリバティブの価格は、市場全体の変動、コモディティ指数の変動、金利の変化、特定コモディティ又は産業に影響を及ぼすイベント等に左右されることがあります。

普通株リスク:普通株は、経済情勢、政府の規制、市場センチメント、国内外の政治情勢、環境・技術問題、個別企業の収益性・生存可能性等、多くの要因の影響を受けます。株価はこれら要因の悪化により下落することがあり、ポートフォリオ・マネジャーがそうした変化を予測できるとの保証はありません。一部の株式市場は他の市場よりも大きく変動し、損失リスクが大きくなることがあります。普通株は発行体に対する資本持分又は所有持分を示します。

集中投資リスク:比較的少数の証券、セクター、産業又は地域への集中投資は、パフォーマンスに大きな影響を与える可能性があります。

信用リスク:発行体若しくは保証提供者の財務状況及び/又は事業が悪化した結果として、債券の価格が下落する、又は、当該証券の発行体若しくは保証提供者が期限の到来した利払い又は元本返済を怠ることがあります。一般的に、低格付債券の信用リスクは高格付債券のそれよりも高くなります。

通貨リスク:通貨、通貨デリバティブ、類似商品、外貨建て証券への投資は、他の一つ以上の通貨に対する当該通貨の相対価値が変動するリスクを伴います。

エマージング市場リスク:エマージング市場及びフロンティア市場への投資は、為替レートの変化、市場流動性の低さ、情報不足、取引所・ブローカー・発行体に対する政府の監督不行き届き、不確実な経済・政治情勢、激しい価格変動等のリスクを伴います。これらリスクが先進国市場のそれと比較し大きくなる可能性があります。

株式市場リスク:株式市場は、経済情勢、政府の規制、市場センチメント、国内外の政治情勢、環境・技術問題等、多くの要因の影響を受けます。

債券リスク:債券の市場価格は、経済情勢、政府の規制、市場センチメント、国内外の政治情勢等、多くの要因の影響を受けます。さらに、金利及び発行体の信用力の変化にも反応して変動します。

海外およびエマージング市場リスク:海外市場への投資は、国内市場では通常伴わないリスクを伴います。これらリスクは、為替レートの変化、市場流動性の低さ、情報不足、取引所・ブローカー・発行体に対する政府の監督不行き届き、不確実な経済・政治情勢、激しい価格変動等のリスクを伴います。これらリスクは先進国市場とは異なるリスクを伴うエマージング市場でより大きくなる可能性があります。

ヘッジリスク:デリバティブを使用したいかなるヘッジ戦略も完全にヘッジできない可能性があります。

金利リスク:一般的に、債券価格は、他の条件が全て同じであれば、金利と逆方向に変動します。市中金利の変動が投資成果に悪影響を与えるリスクは、短期債よりも長期債の方が大きくなります。

発行体リスク:特定の発行体が発行する証券は、当該発行体に固有の要因から影響を受けることがあり、結果として、その収益率は市場の収益率から乖離することがあります。

レバレッジ・リスク:レバレッジを利用することで、(i)レバレッジを利用しないで投資を行った場合よりも損失額が大きくなる、(ii)追加証拠金の発生により、時期尚早であるにもかかわらず、ポジション解消を余儀なくされる等のポートフォリオのリスクが高まります。

ロング/ショート戦略:ロング/ショート戦略は、ロングとショートの資産価格が同時に逆方向へ変動し、かつその動きが戦略に好ましくない方向であった場合、より大きな損失が生じる可能性があります。

不動産証券リスク:不動産投資信託(REIT)等、主として不動産業に従事する企業の証券への投資は、不動産価格の循環的性質、一般的・地域別景気情勢、供給過剰と競争激化、人口動態の傾向、金利上昇、他の不動産市場からの影響等のリスクを伴います。

レポ取引/リバース・レポ取引リスク:レポ取引とリバース・レポ取引は共にカウンターパーティー・リスクを伴います。リバース・レポ取引は、売却された債券を買い戻す際に、当該銘柄の市場価格が予め定められた買い戻し価格を下回るリスクも伴います。

デリバティブ商品リスク:オルタナティブ投資でよく使用されるデリバティブは変動が激しく、様々なレベルのリスクを伴います。その価格は、市場全体の変動、当該企業の事業・財政状況、指数の変動、金利の変化、特定産業又は地域に特有の要因等の影響を受けることがあります。デリバティブ取引の多くは、契約締結時に支払った又は預託した金額以上の市場エクスポージャーを取る場合があるため、市場の悪化の程度が比較的小さくても、投資元本の喪失に留まらず、それを超える損失を被る可能性があります。

他プールへの投資リスク:ファンド・オブ・ファンズに投資する投資家は、ファンドが投資先ファンドに投資する額に比例し、投資先ファンドに投資する投資家と同じリスクを伴います。

信用売りリスク:信用売りは、信用売りを行った証券の市場価格が上昇し、理論上損失が無限大となるリスクを伴います。

小型株リスク:中小型株の株価は大型株のそれよりも変動が大きくなることがあります。さらに、中小型株の流動性は、多くの場合、大型株よりも低くなります。

サステナビリティリスク:環境、社会、ガバナンスに関する事象や状況が発生した場合、投資価格に実際にあるいは潜在的に大きく影響を与える可能性があります。

追加リスク

流動性リスク:流動性が低い証券への投資は、市場価格の大幅な変動に見舞われることがあり、適正価格で売却できる保証はありません。

運用者リスク:投資パフォーマンスはポートフォリオ運用チームの能力とその投資戦略に依存します。投資戦略が予想通りに機能しなかった場合、投資戦略を実行する機会が得られなかった場合又は運用チームが投資戦略を成功裏に実行することができなかった場合に、運用成果はアンダーパフォームしたり、大幅な損失を記録する可能性があります。

分散により利益が生じる、又は、損失が避けられることを保証するものではありません。

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マット・ウィットハイラー

プライベートエクイティ・プリンシパル兼セクター・スペシャリスト