-
植木秀郎
- インベストメント・ディレクター
Skip to main content
- 会社情報
- INSIGHTS コンテンツ
- 運用ソリューション
過去10年にわたり、アクティブ運用が報酬控除前でも市場ベンチマークに対して超過収益を獲得できないことに関して、多くの研究や論文が出ています。しかし、大多数の研究の対象は米国株式市場、特に米国大型株式に集中し、実際にアクティブ運用者が、他の市場分野で過去に高い超過収益を生み出してきた、そして引き続き生み出す可能性があるという現実を軽視または無視している傾向にあります。非効率な日本株式市場はその典型的な例であると考えます。
「論より証拠」というように図表1が示す通り、2000年から2020年までの20年間では、少なくとも60%以上(年によってはそれを上回る)の日本株式のアクティブ運用者が3年ローリング期間のうちの7割の期間で、ベンチマークをアウトパフォームしています。一方、多くの米国大型株式の運用者はベンチマークを一貫してアウトパフォームすることに苦戦し、60%以上の運用者が超過収益を生み出した期間は、3年ローリング期間のわずか25%に過ぎません。
この分析は、日本株式市場がアクティブ運用者に超過収益を創出する多くの魅力的な投資機会を提供していることを示しています。分析が示す通り、私たちは日本株式市場に大きな投資機会が存在し、日本株式市場への投資はアクティブ運用者にとって、魚が多く放流された「漁場」で漁をするようなものであると考えています。もちろん、漁師自身の技量が低かったり、適切な餌を使っていない場合、魚が豊富な漁場だけでは十分ではありません。言い換えると、能力があり、優れた判断力を持つアクティブ運用者は、魅力的な投資機会を十分に活かすことができる可能性が高いと言えます。
図表1
アクティブ運用者がアウトパフォームした期間
3年ローリング期間
60%以上の運用者がアウトパフォームした期間の割合(%)
出所:eVestment、ブルームバーグのデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。期間:2000年12月31日ー2020年12月31日。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。
日本株式やその他の市場が魚が豊富な「漁場」となる理由は何でしょうか。私たちは市場の効率性の程度またはその欠如に起因すると考えています。一般的に米国大型株式で知られているように、より効率性の高い市場であればあるほど、アクティブ運用者が市場全体の指標となるベンチマークをアウトパフォームすることは難しくなります。一方、日本株式のように効率性がより低いまたは非効率な市場では、一連の投資機会の広がりと層の厚さにより、より大きな超過収益の獲得の可能性があります。こうした投資機会の多くは見逃されているか、過小評価されているため、価格付けが歪んでいると考えます。
ウエリントン・マネージメントのファンダメンタル・ファクター・チームは、市場の効率性を評価するいくつかの主要な基準を策定しました。近年、日本株式はすべての基準において低スコアが続出しており、世界で最も非効率な主要市場の一つとなっています。例えば、「コンセンサス」は、予想収益の分散(ばらつき)、および実際の収益とコンセンサス予想の差(絶対値の平均、イベント・サプライズ)に基づきます(図表2)。日本株式市場は業績見通しやイベント・サプライズについて、散らばり、乖離が最も大きい市場の一つです。 企業が発表する業績とコンセンサス予想の間には大きな差が生じることが多いため、企業特有のファンダメンタルズを十分にリサーチすることで、そうした分散を予想し活用でき、超過収益を獲得する機会が多く見込まれます。
図表2
コンセンサス
2020年12月31日までの10年間における地域別月次中央値に基づきます。出所:eVestment、ブルームバーグのデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。
日本株式はグローバルで非効率性が高い株式市場の一つであり、入念なリサーチに基づき強固な投資プロセスを有するアクティブ運用者にとって、資産配分の観点でも貴重な超過収益を生み出す機会が豊富に存在していると考えます。つまり、「漁場」で漁をする際の小手先の釣り竿やタックルボックス(道具箱)は必要ありません。日本株式への投資は、「人の行く裏に道あり花の山、いずれを行くも散らぬ間に行け」という相場格言が当てはまると考えます。
植木秀郎
ミーガン・ケリー