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上場インフラ株①:
構造的トレンドへの効果的な投資

2022-12-31
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過小評価されている上場インフラ株の魅力

インフラは現代経済の血液です。そのインフラ資産の投資機会が、上場市場と未上場市場の両方で、増加・多様化しています。とりわけ、未上場インフラ株市場は近年大きく拡大しました。しかし、インフラ投資に乗り出す際には、まず上場市場に目を向けるべきでしょう。なぜなら、上場インフラ株市場は多様なセクターと地域の魅力的な投資機会を提供しますが、未上場市場にはそこまでの広がりがないからです。また、インフラは基本的に長期投資に適した資産ですが、上場市場であれば、未上場市場のような流動性の制限や価格透明性の低さという問題は生じません。

上場インフラ株の特に魅力的な点は、私たちが「エンデュアリング・アセット」と呼ぶ企業への投資が可能なことです。エンデュアリング・アセットとは、

  • 世界経済に必要不可欠な耐用年数の長い実物資産を所有し、
  • 発電、輸送、データ・インフラなどの分野で、テクノロジーがもたらす創造的破壊から受ける影響が限定的であるため、高い競争力を保持し、
  • 契約や規制面である程度保護されている企業のことです。

エンデュアリング・アセットのもう一つの特徴は、社会や経済を根本的に転換させる可能性があるデータの増大や脱炭素化など、長期的なトレンドに対して構造的に関わる事業を展開していることです。

脱炭素化への効果的なエクスポージャー

上記の転換トレンドの中で最も重要なのは、間違いなく、気候変動の加速を受けた脱炭素化の推進でしょう。風力や太陽光発電などの再生可能エネルギー・インフラへの投資は、この社会を根底から変える動きに対してエクスポージャーを持つ最も簡単な方法ですが、そのバリュエーションには既に将来の可能性のほとんどが織り込まれています。また、再生可能エネルギー発電の成長は、このテーマの投資機会の一部でしかありません。ITを軸とした「ニュー・エコノミー」においては、輸送から暖房、データストレージまで、あらゆるものの動力源は電気であり、電力網が中心的役割を果たすため、規制電力会社は魅力的な代替投資先であると考えています。インフラ事業は本質的に資本集約型事業です。従って、他の条件がすべて同じであれば、将来に向けた設備投資を拡大すればするほど、成長可能性も高まることになります。電力の場合、脱化石燃料化に伴う設備の更新や電力網の移行に今後20年間で数兆米ドルが必要であると言われており、これまでにない規模の設備投資が見込まれます。国際エネルギー機関(IEA)は今後20年間に電力網と再生可能エネルギーに必要な投資をそれぞれ5,170億米ドルと5,850億米ドルと見積もっています(図表1)。 

この投資拡大傾向は循環的ではなく長期的傾向であるため、今後数十年間は電力会社の増益率が高まる可能性があります。この成長可能性の恩恵を享受し、自らの投資ポートフォリオの脱炭素化のウエイトを高め、ひいては、このテーマの市場での拡大に貢献したいと考える投資家にとって、電力株の現在のバリュエーションは買いの好機を提供しています。2022年市場展望でご説明した通り、経験豊富なアクティブ運用者であれば、現在は遅れを取っているように見えるものの、脱炭素化への対応を加速させることができる公益企業を特定することで、この投資機会を活用することができると考えます。

図表1
大幅増が予想される電力網と再生可能エネルギーへの投資

世界の年間投資額(億米ドル)

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出所:World Energy Outlook 2021、IEA Announced Pledges Scenarioのデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。※上記は過去の実績および将来の予測であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。上記はあくまで例示目的で示しています。

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トム・レヴェリング

グローバル産業アナリスト
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ケン・バウムガートナー

インベストメント・ディレクター