portfolios for inflation

上場インフラ株②:
インフレへの備え

2022-12-31
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コロナ禍からの景気回復は世界中でインフレ率の急上昇を伴いました。世界的な消費者物価の急騰は、サプライチェーンの一時的な混乱によるところが大きく、永続的なものではない可能性が高いでしょう。しかし、インフレ高進を下支えする構造的変化も認められます。グローバル化のほか、人口動態やエネルギー・コストを巡る環境など、過去30年間にわたり物価を抑制してきた主要因の一部が反転し始めています。

構造的なインフレ進行に備える

上記のようなインフレ要因の変化に加え、金融引き締めへの転換の可能性が投資ポートフォリオの見直しの必要性を示唆しています。物価連動債などの伝統的なインフレヘッジ資産への投資を検討すると同時に、持続的なインフレ上昇に対するポートフォリオの耐性を高める別の手段も模索する必要があるでしょう。インフラ事業の収益はインフレの影響を受けにくいため、グローバル上場インフラ株への選別的な投資も検討に値すると考えます。私たちがエンデュアリング・アセットと呼ぶ資産はまさにその対象となり得ます。エンデュアリング・アセットとは、安定的なインカムを生み出し、規制や契約によって保護された、電力網などの耐用年数が長い実物資産を指します。こうした資産を保有する企業は多くの場合、高い競争力を有します。

直接的・間接的なインフレリスク低減効果

エンデュアリング・アセットを保有する企業はインフレから直接的に保護されている場合があります。欧州の規制公益企業の多くがこれに該当します。欧州では、公益事業については、インフレ連動規定に基づき、インフレ率に一定のスプレッドを上乗せした収益率を確保することが認められています。別の例としては、インフレ率と企業が利用者に課す料金との間接的な連動が挙げられます。この場合、コストが増加すれば、料金の引き上げにより、予め取り決められた水準の収益率を維持することが可能です。例えば、米国の公益企業は多くの場合、収益が黒字であっても、インフレにより増加した営業費用を利用者に転嫁することができます。さらに、インフレ率が高止まりした場合は、規制当局が、通常2~3年ごとに行われる料金見直しの際に、利用料を改訂します。

他のインフラ資産では、空港にインフレ連動規定が設けられている例は少ないものの、ほとんどの有料道路はインフレ上昇分の一部を利用料金に転嫁することができます。また、石油・ガスの貯蔵や輸送設備の保有者、いわゆるミッドストリーム企業はエネルギー事業との関わりから、インフレとの相関性が高い傾向にあります。一方、通信回線やデータ関連のインフラ設備は、多くの場合、物価の上昇を顧客に転嫁することができるため、高い競争優位性を持ちます。

つまり、エンデュアリング・アセットはコモディティと同様に、予想外のインフレ上昇の影響を回避することはできませんが、中長期では一定のインフレリスク低減効果を持ち、インフレを考慮したポートフォリオの組み入れ銘柄として適しています。

金利の上昇

公益株や他の上場インフラ株の懸念の一つとしてしばしば指摘されるのは、金利上昇への感応度の高さです。他の多くのリスク資産と同様に、これらの株式も予想外の急激な金利上昇に直面すれば苦戦するでしょう。しかし、これまでのところ、主要中央銀行は段階的な金融正常化を慎重な姿勢で進めています。より長期では、エンデュアリング・アセットは金利上昇によるコスト増を顧客に転嫁することができ、収益率の上乗せスプレッドの引き上げも認められるはずです。バランスシートが健全で、配当支払いよりも成長や再投資を重視できる企業、これは金利上昇への感応度が相対的に低いことを意味しますが、アクティブ運用者であれば、そのような企業を選別できる可能性があります。最後に、公益企業の過去2~3年間のアンダーパフォーマンスについてですが、これは市場が金利上昇の潜在的影響を織り込んだ結果であり、安定的な公益企業の予想外の上昇余地を示唆していると考えています。

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トム・レヴェリング

グローバル産業アナリスト
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ケン・バウムガートナー

インベストメント・ディレクター