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債券インパクト投資の成長、進化、機会

2023-05-31
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インパクト投資の好機

ポール・スキナー
インベストメント・ディレクター

‌ウイル‧プレンティス
インベストメント‧アナリスト

昨今の新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大では、医療やインターネット・アクセスの改善に対する幅広いニーズなど、社会的課題が顕在化しました。ロシアのウクライナ侵攻ではサイバーセキュリティや再生可能エネルギーへの注目が高まりました。さらに地球環境問題については、第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で一層積極的な目標が設定されました。

世界で重大な社会的課題や地球環境問題が増大すると共に、差別化された投資アプローチへの需要が高まっています。資金を「社会に良い影響を与える」ことに振り向ける手段として、上場市場の役割が注目されています。‌インパクト投資は、長期的な市場の成長に伴い社会にプラスの変化・影響=インパクトを与え、魅力的な投資収益を獲得することが期待できます。  

‌上場債券に投資するウエリントンのインパクト投資のユニバースには、世界の社会的課題の解決につながる事業や製品を手掛ける発行体に加え、グリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティ・リンク債などの「サステナブル債券」が含まれます。‌サステナブル債券の市場は急速に拡大しており、社会的課題解決への資金流入が増えてきています。

‌ウエリントンのインパクト投資は、地球環境や社会への良い影響(インパクト)の最大化と魅力的な投資収益の獲得をめざしています。‌社会的課題解決を手掛ける優れた企業や発行体は構造的な追い風から恩恵を受けると見込まれ、それらの企業や発行体への厳選投資はより魅力的な投資収益の機会獲得につながると考えます。‌投資家も世界の喫緊の課題に対応する差別化された解決策を手掛ける発行体や企業への投資をより意識するようになってきており、需要は拡大しています。

‌そうした社会的インパクトを生み出す発行体への投資機会の多くが、上場債券に存在します。現在のインパクト投資のモメンタムを活用しつつ、投資を通じて社会に良い影響を与えることをめざす投資家にとって、‌確立されたインパクト投資の運用基盤、高いリサーチ能力、豊富な債券運用の実績を持つ運用会社との協働は、有効な選択肢の一つと考えます。


投資ユニバースの拡大:投資機会の可能性

キャンプ‧グッドマン
債券ポートフォリオ‧マネジャー

持続可能な社会の実現に向けて、政府、企業、投資家が積極的な取り組みの必要性を認識する中で、債券を投資対象とするインパクト投資の機会は急速に進化しています。私たちは引き続き、先進国と新興国の両市場において、幅広い発行体企業・種類で魅力的な投資機会が存在すると見ています。これまでウエリントンのインパクト投資の基準を満たす銘柄の大部分は先進国市場の発行体でした。しかし、現在では企業や政府、慈善団体などが対応しきれていない「社会的課題=アンメットニーズ」が多く存在する新興国市場においても、投資機会が拡大していると考えます。

‌インパクト投資は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた企業の資金調達、低炭素社会への移行の促進、気候変動の物理的リスクに対するレジリエンス(耐性・回復力)の強化などで、重要な役割を果たすでしょう。‌特に新興国では、政府と消費者の生活の質および持続可能な経済発展への関心が高く、アンメットニーズに対する解決策を手掛ける企業が増えています。それに伴い、インパクト企業による社債やサステナブル債券に対するニーズが加速すると予想されます。

図表1は、新興国市場における最近のサステナブル債券発行額の増加を示しています。引き続き堅調なグリーンボンドの発行に加え、ソブリン債やハイイールド債券の発行体がソーシャルボンド、サステナブル債券、サステナビリティ・リンク債を通じてサステナブル債券市場に参入してきています。このような新たな成長要因が投資機会を牽引しています。

図表1
新興国市場におけるサステナブル債券の投資ユニバース
新興国市場のサステナブル債券発行額、2015~2021年(億米ドル)

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出所:ブルームバーグのデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。2021年12月31日時点。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。

債券インパクト投資のユニバースにおける質と発行量は、基準や規制、市場参加者の観点で改善されてきました。私たち大手機関投資家は、発行体とのエンゲージメントを行い、より有効な発行条件について助言します。また、私たちはラベル付き債券のポートフォリオへの適合性を評価するために確固たるフレームワークを構築し、グリーンウォッシング(見せかけの環境への配慮)の対策として発行体とのエンゲージメントを活用することが重要だと考えます。

‌社会にプラスのインパクトを与えることができる手段は、これまでにないほど多様化しています。‌債券のインパクト投資を通じて、今後さらに社会に良い影響を与える多くの投資機会が見出されるでしょう。


エンゲージメント:発行体の説明責任

バージニー‧ペレ
債券クレジット‧アナリスト

私たちは債券のインパクト投資において、投資先発行体とのエンゲージメントが極めて重要だと考えます。‌エンゲージメントは発行体の投資リスクと投資機会を特定・評価しつつ、継続的にプラスのインパクトを引き出していくことが可能だからです。私たちはエンゲージメントの優先事項として主に次の4つを掲げています。  

図表2
エンゲージメントの主な優先事項

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インパクト成果指標(KPI)の計測では、予想を下回る成果を示している発行体を特定し、パフォーマンス不振の根本的な原因を把握すると共に、どの発行体がエンゲージメントの働きかけから恩恵を受けることができるかを見極めます。

‌私たちは、不振に陥っている発行体が直面する課題を把握し、改善を促す取り組みの支援をめざしています。‌私たちにとってエンゲージメントは、発行体との長期的な関係を築き、受託者責任を果たす上で特に重要です。‌その目的は投資先の発行体および企業が目に見える成果を達成し、プラスの軌道に乗るように導くことです。‌エンゲージメントの効果やKPIのパフォーマンスに改善がみられない発行体や企業は、売却の対象になる可能性があります。

‌私たちは発行体の社会的なインパクトに加え、インパクトの取り組みの進展およびその進捗報告に対するコミットメントも評価します。‌積極的なエンゲージメントは、発行体のKPIの計測と報告における改善点や方法を見出すのに役立ちます。発行体のインパクトを正確かつ一貫して計測することは、信頼性の高いインパクト投資につながる鍵と言えるでしょう。

‌私たちは発行体のESGプロファイルに関する理解を深め、温室効果ガス(GHG)排出量削減計画を評価し、サステナブル債券の発行を支援するために、対象を絞ったエンゲージメントを行っています。‌ウエリントンの多様なグローバル運用チームおよび広範囲にわたる企業の取締役会や経営陣へのアクセスは、私たち運用チームの投資先発行体とのエンゲージメント活動を支えています。‌株式・債券の運用チームやESGリサーチのメンバーに加え、‌気候変動に関するエンゲージメントには当社の気候リサーチ・チームも加わり、多角的なエンゲージメントを実施しています。

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ポール‧スキナー

インベストメント・ディレクター
will prentis

ウイル‧プレンティス

インベストメント・アナリスト
Campe Goodman

キャンプ・グッドマン

経験

21 years of professional experience

債券ポートフォリオ・マネジャー
virginie pelle

バージニー‧ペレ

債券クレジット・アナリスト