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2022年市場展望:インパクト投資

世界経済の回復を後押しする
ソリューションの追求

2022-12-31
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下記コメントは2021年11月末(米国時間)時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。

ウエリントンのインパクト投資では2022年、11の投資テーマの中でも特に「金融サービス」、「デジタルデバイド(情報格差)」、「健康促進」の分野に焦点を当て、地球環境問題や世界の社会的課題の解決につながる革新的な技術や事業を手掛け、新しい市場を切り開いているインパクト企業に引き続き厳選投資していきます。2021年は新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大とそれに伴う景気減速を受け、社会経済に根深く存在する不平等が露呈し、金融、デジタル、医療に関する課題解決策の必要性が増しました。また、気候変動対策とインパクト投資が重なる分野が増えていることや、気候変動への適応策と気候変動の緩和策の需要が急速に高まっていることに着目し、2022年は気候変動の観点からもいくつかの投資テーマを検証していく方針です。

注目投資テーマ:金融サービス

世界では多くの家庭や中小企業が新型コロナウイルス禍による落ち込みから経済的な回復をめざして必死に取り組んでいます。金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)を促進させるにはテクノロジーを含め、低コストの金融商品サービスへのアクセスが不可欠です。私たちは2022年に向けて、特に金融機関やその他プロバイダーから資金調達が困難な新興国の小規模事業者や起業家を支援している企業や発行体に投資機会を見出しています。

例えば、プエルトリコのある企業は、地元の個人や小規模事業者に金融サービスを提供することで金融包摂を促しています。同国は自然災害と長引く景気低迷で大きな打撃を受けており、その復興・再生プロセスには金融サービスへの広範かつ安定したアクセスが必要になります。その他にも、私たちは新興国やフロンティア諸国で十分な金融サービスを受けていない、あるいは受けられない人を支援する企業にも注目しています。その一例として、南アフリカで低所得層を中心とした葬儀用の積み立て保険を提供する総合金融機関が挙げられます。同国では葬儀を大々的に催す習慣があり、破綻に至る要因の一つとなっているためです。

また、インパクト投資の債券運用戦略では、ブラジルの小規模事業者向けにEコマース(電子商取引)の運営やコスト削減を可能にする金融テクノロジー・ソリューションを提供している発行体企業に注目しています。同社のプラットフォームは、新規市場の開拓や成長機会の追求を支援することで、顧客の事業拡大を後押ししています。

注目投資テーマ:デジタルデバイド(情報格差)

信頼性の高いデジタル接続は経済社会の安定に重要です。しかし、先進国と新興国のデジタル格差は拡大し続けています。特に教育と職業訓練、金融サービス、ヘルスケアの分野では、長期的に通信と接続関連の技術の需要増加が見込まれます。「デジタルデバイド(情報格差)」の投資テーマは電力網のエネルギー効率化という、もう一つの重要な社会的課題である持続可能性への投資も可能にします。

例えば、インパクト投資の債券運用戦略では、コスタリカの電気通信・エネルギー企業に投資しています。同社が発行する社債の利率はスマートメーター(次世代検針器)の設置率と連動しています。同社は情報伝達を支えると共に、農村地域のデジタル経済への参加を促し、同時にエネルギーの効率化を図るという大きな役割を果たしています。

注目投資テーマ:健康促進

新型コロナウイルス禍では低コストの医療へのアクセスの欠如、ヘルスケアサービスやその提供における非効率性、医療インフラに対する慢性的な投資不足が明らかになりました。そうしたギャップを埋める重要性を社会が認識しつつある中、インパクト企業はそれらの課題解決につながるソリューションを生み出しています。新興国では、医療の質向上につながるとみられるヘルスケアサービスの垂直統合に投資機会があると考えます。例えば、ブラジルの垂直統合型のヘルスケアサービス企業は、低所得層に対する質の高い医療へのアクセスの改善をめざしています。同社のクリニックや病院は、サンパウロとその周辺地域で産科および歯科関連の医療サービスを提供しています。また、インドの農村地域で、ヘルスケアサービスの向上のために遠隔医療事業を展開し始めた従来(実店舗)型の医療サービス企業にも注目しています。一方、一部の新興国では、垂直統合モデルが医療費の増加につながっています。消費者に与える医療費増加の影響を企業がどのように管理・負担軽減するのかを理解するために、私たちは企業との対話を続けていきます。

多くの国が2022年も引き続き、新型コロナウイルス収束に向けた支出や、新型コロナウイルス禍で延期されてきた選択的治療の需要回復に伴う医療費増加に向き合うことになるでしょう。新しいヘルスケアサービス提供モデルは私たちのインパクト投資の「健康促進」のテーマとも適合しており、基準を満たしていると考えます。その一例として、米国で疾病予防の第一線で地元の医師らがプライマリケアを提供できるよう支援しつつ、患者の転帰の改善やコストの削減に寄与するソリューションを手掛ける企業が挙げられます。過去に医療インフラにあまり資金を投じてこなかった中国やその他の新興国では、オンライン診療など遠隔医療が高齢者や農村地域の患者にヘルスケアサービスへのアクセスを可能にし、ひいては健康増進につながると期待されています。

気候変動:複数のテーマにまたがるインパクト投資の機会

ウエリントンの気候リサーチチームとウッドウェル気候研究センターの共同調査は、政府および企業が気候変動に対するレジリエンス(耐性・回復力)を強化する必要があることを明らかにしています。社会が気候変動に適応し、気候変動から人の命や財産を守るためのソリューションは、私たちのインパクト投資の複数のテーマで網羅しています。「安全と危機管理」の投資テーマでは、激しい気象現象にも耐え得る耐衝撃性の窓やドアの製造を手掛ける革新的な企業への投資機会を見出しました。

インパクト投資の債券運用戦略では、「住居の確保」、「水問題と公衆衛生」、「金融サービス」のテーマに寄与する可能性があるグリーンボンドに注目しています。これらの債券への投資は、エネルギーや水資源の効率化、持続可能な建築資材の使用、経済の低炭素化の促進など、発行体企業の目標支援につながります。

2022年も引き続き、私たちは持続可能性を重視したストラクチャード・ファイナンスの重要性と信頼性、および持続可能性パフォーマンス目標に対して高い基準で検証していきます。また、発行体企業に持続可能性プロファイルの改善を促すようなファイナンスへの投資を私たちはめざしていきます。企業や発行体は、持続可能性指標を用いた目標設定をより重視するようになってきています。そうした情報開示は、企業や発行体の脱炭素への取り組みやサプライチェーンの透明性などの重要な課題に関する報告と進捗のベストプラクティスを議論できる機会を私たちに提供してくれます。私たちは引き続き、企業の取締役会や経営陣とのエンゲージメントを実施し、地球環境や世界の社会的課題へのプラスの影響を検証・測定する指標を確立していきます。

 

 

Tara Stilwell

タラ・スティルウェル

株式ポートフォリオ・マネジャー
Campe Goodman

キャンプ・グッドマン

債券ポートフォリオ・マネジャー
Liliana Castillo Dearth

リリアナ・ダース

株式ポートフォリオ・マネジャー